神戸の玄関口であるJR神戸駅およびハーバーロード周辺は、かねてより「まちづくり活動の空白地帯」とされてきました。こうした状況を受け、地域まちづくり組織「みなと元町タウン協議会」は、令和3年6月に活動エリアをJR神戸駅前まで拡大。以降、地域の現状分析や課題抽出、将来像の検討を重ね、令和5年6月に「JR神戸駅・ハーバーロード周辺のまちづくり構想案最終案」が正式に承認されました。
本構想では、都市の顔としてふさわしい景観づくりや歩行者にやさしい空間整備など、複数の方針が掲げられており、地域住民や企業、神戸市が協働しながらまちの魅力向上と活性化を図っていく方針です。
→みなと元町タウン協議会 JR神戸駅・ハーバーロード周辺のまちづくり構想
→神戸市 神戸駅前広場・周辺道路のデザイン
JR神戸駅・ハーバーロード周辺のまちづくり構想の概要
- 構想の背景と目的
JR神戸駅およびハーバーロード周辺は長らくまちづくりの空白地帯だったが、「みなと元町タウン協議会」が活動エリアを拡大し、地域活性化を目的とする構想を策定・承認。 - 3つのまちづくり基本方針
① 景観とにぎわい空間の創出
② 元町商店街・ハーバーランドをつなぐ南北動線の強化
③ 緑と光にあふれた快適な歩行者空間の整備 - 交通・回遊性の向上
バス停の復活や歩行者動線の明確化により、駅周辺から商店街・港湾部へのアクセス性と回遊性を向上。 - 土地利用と再整備の方針
再開発候補地の明示、機能更新による複合利用の推進、街の一体感と賑わいを生む空間設計を構想。 - 「ネットワーク構想」による都市演出
「緑・灯り・バナー」の3要素を組み合わせ、統一感と魅力ある都市空間を創出し、来訪者の滞在意欲を高める。 - 地域組織による継続的取り組み
協議会が中心となり、企業・行政と連携して長年の課題解決に取り組み、構想実現に向けた地域主導の体制を強化。 - 駅前広場と道路空間の再整備
駅前に新設される駐輪場・ロータリーにより交通利便性が向上し、駅前空間は人が集う賑わいの場として再生される。

JR神戸駅・ハーバーロード周辺のまちづくり構想は、都市の特性や地域資源を活かしつつ、以下の3つを柱とするまちづくり基本方針を掲げています。
1つ目は、「神戸の顔にふさわしい景観とにぎわい空間の創出」です。高経年で老朽化した建物や低層の小規模ビルが密集するエリア、十分に活用されていない空き地や公共空間について、建替えや再整備を促進。都市としての魅力と品格を兼ね備えた景観へと更新していきます。
2つ目は、「元町商店街・ハーバーランドへの回遊拠点となる南北動線の強化」です。神戸駅前から周辺施設へのアクセスを明確にし、誘導サインや照明、バナーなどの設置によって、訪れる人々が歩いて楽しめる環境を整えます。これにより、駅から商店街・ハーバーエリアへの人の流れを生み出し、周遊性を高めていきます。
3つ目は、「緑と光にあふれた歩道空間の整備」です。既存の民有地緑地や建物前の空間を活用し、グリーンマルシェやポケットパークとして開放。街路の明るさや植栽の充実も含め、人々が安全かつ快適に歩ける魅力的な都市空間を目指します。

地域のにぎわいを支えるには、回遊性の高い交通ネットワークの構築が不可欠です。その一環として、元町商店街西口にかつて存在したバス停留所を復活させることが検討されています。これにより、商店街との連携が強化され、駅周辺の人の流れが活性化される見込みです。
また、JR神戸駅から元町商店街およびハーバーロードまでの南北動線を明確化し、歩いて楽しい通りづくりを推進します。緑や花に彩られた歩行者空間の整備、イベント開催を想定した広場設計により、来訪者が行き交い、滞在したくなるような魅力ある都市環境を整備します。


構想では、望ましい土地利用と再整備の考え方を示した全体構想図を作成。再開発が想定されるエリア、緑化空間、交通拠点の候補地などを可視化しています。
具体的には、クリスタルタワーと神戸中央郵便局の間や、モトコー再開発エリアなどでの機能更新が想定され、住宅・商業が混在する多機能的なまちづくりが検討されています。また、元町商店街からハーバーランドへと続く動線を中心に、シンボリックな広場やモニュメントの設置を通じて「賑わいの溢れ出し」を演出するなど、街全体の一体感と個性を両立させる方策が取られています。
また、駅前広場の再整備では、バスロータリーやタクシーロータリーの再編、地下駐輪場の整備によって生まれた新たな空間を、人が集い、憩うための広場へと生まれ変わらせます。地下街の吹き抜け空間には、木材を用いた大屋根を設置し、温かみと落ち着きを感じられる雰囲気を創出。さらに、地域のシンボルである湊川神社や、1930年開業の歴史的なJR神戸駅舎(三代目)との調和を意識したデザインにより、「神戸」の名にふさわしい高質で風格ある駅前景観を形成します。
「灯り」「緑」「バナー」の3つの要素を用いて、統一感のある都市空間を形成する「ネットワーク構想」も本計画の大きな柱です。これらを通じて、訪れる人に安心感・快適さ・賑わいを同時に提供する環境整備を目指します。
緑のネットワークでは、街路樹・植込み・フラワーポットなどを戦略的に配置。灯りのネットワークでは、歩行者空間の明るさと安全性を向上させ、夜間も賑わいを保てるよう整備します。さらに、バナーによる視認性の向上で商業施設やイベント情報を発信し、都市全体のにぎわいに貢献します。

「みなと元町タウン協議会」は、平成3年の設立以来、地域の景観まちづくりや市民協定づくりを通じて、長年にわたり地域と行政をつなぐ架け橋として活動してきました。特に阪神・淡路大震災後には、景観形成市民協定を策定し、沿道景観の質を維持・向上させるために地道な取り組みを継続しています。
また、長年の課題であったJR神戸駅前の「三角ゾーン」では、地元企業の協力を得ながら清掃活動や意見交換を重ね、徐々にまちづくり機運を高めてきました。この流れを受け、エリアを正式に拡大し、ワーキンググループによる「まちづくり構想」の策定へとつながっています。今後は、構想実現に向けて住民・企業・行政の連携をさらに強化し、地域主導の取り組みを着実に進めていく予定です。


神戸市は、神戸駅前にふさわしい高質で風格ある空間づくりを目指し、駅前広場と周辺道路の基本計画をもとに再整備を進めています。主な取り組みとして、地下タワー式駐輪場(市内初)を設けることで自転車利用者の利便性を大幅に向上。加えて、バスロータリーの移設や一般車・身障者用ロータリーの新設により、公共交通と民間交通のスムーズな乗り換え環境が実現されます。
さらに、再編によって生まれた空間は「人のための空間」として整備され、賑わいと交流の場としての機能も期待されます。駅前広場が単なる通過点ではなく、人々が立ち寄り、集い、滞在したくなるような場所となることで、まちの顔としての神戸駅の価値が一層高まることが見込まれます。
最終更新日:2025年6月14日