西九州新幹線の「福岡県南乗り入れ」の実現に向けた気運が高まる中、「西九州新幹線 福岡県南乗り入れ実現総決起大会」が2025年6月18日に開催されました。大会は久留米市で開かれ、地元経済界を中心に福岡県南部7つの商工会議所が結集。地域一体となった誘致活動の集大成として、多くの関係者が参加し、熱意とともに将来への展望が語られました。大会では、元JR九州初代社長・石井幸孝氏による基調講演も行われ、西九州新幹線の福岡県南部への乗り入れがもたらす経済的・社会的な効果、特に物流や観光面における大きな可能性について議論が深められました。
この福岡県南乗り入れ構想は、佐賀県内に未整備のまま残る区間のルート決定と密接に関わっており、佐賀駅や佐賀空港などの地域拠点をどのように活かすかが焦点となっています。今後の地域振興に向け、持続可能な交通ネットワークを築くためにも、本大会はその大きな一歩と位置付けられています。
→佐賀県 九州新幹線西九州ルート
→久留米商工会議所 西九州新幹線 福岡県南乗り入れ実現総決起大会が開催されます
西九州新幹線未整備区間の概要
- 大会の開催日と場所
2025年6月18日、福岡県久留米市にて「西九州新幹線 福岡県南乗り入れ実現総決起大会」が開催された。 - 主催・参加者
福岡県南部の7つの商工会議所と地元経済界が主導し、多くの関係者が参加して地域一体の決意を表明した。 - 目的
西九州新幹線の福岡県南部への乗り入れ実現に向けた気運の醸成と、今後の誘致活動の強化。 - 基調講演
JR九州の初代社長・石井幸孝氏が登壇し、新幹線による経済波及効果や物流・観光の可能性について講演。 - 構想の背景
新鳥栖~武雄温泉間の未整備区間のルート選定が遅れており、福岡・佐賀・長崎の広域的な連携が求められている。 - 地域の期待
交通利便性向上による人口流動性・観光・産業振興への期待が高まっている。 - 今後の展望
佐賀駅・佐賀空港を活用した持続可能なルート構築を模索しつつ、地域全体で実現に向けた合意形成を進める。

西九州新幹線の未整備区間(新鳥栖~武雄温泉間)のルートには、大きく分けて3つの案が存在します。これらのルートはそれぞれ異なる地域特性と発展の可能性を持ち、建設コストや工期、周辺環境への影響、地域活性化の効果など様々な観点から比較検討されています。現在議論の中心となっているのは以下の2案です。
- アセスルート(佐賀駅を通るルート)
- 南回りルート(佐賀空港を経由するルート)
この他、参考案として「北回りルート(佐賀市北部を経由するルート)」も存在しますが、現在のところ議論の主軸からは外れています。

「南回りルート」は、筑後船小屋駅から佐賀空港を経由し、武雄温泉駅に至る約51kmのルートで、佐賀空港と新幹線駅を直結させる構想です。整備費用は約11,300億円と、他の案と比べて約2倍の高額な投資が必要とされる一方で、佐賀〜博多間は約26分、長崎〜博多間は約58分と、それなりの時間短縮効果も見込まれています。
このルートは、佐賀空港の活用を促進し、航空と鉄道を連携させた新たな交通ハブの形成が期待される点が大きな特徴です。福岡空港の混雑緩和策や広域物流ネットワークの強化、航空貨物と新幹線貨物の接続による効率的な流通体制の確立など、未来志向の施策に貢献すると見られています。
ただし、自然環境や水産業への影響が大きな課題となります。ルートは東よか干潟(ラムサール条約登録湿地)や有明海の海苔漁場を通過するため、環境保護と両立できる高度な技術・対策が求められます。さらに、現在の公共交通網では空港から市街地へのアクセス時間が長いため、空港利用者の利便性向上には追加の整備が必要です。
また、投資効果(B/C)は1.3にとどまり、収支改善効果も年間0億円と採算性に乏しい点が懸念されます。しかしながら、物流政策や首都圏・関西圏とのつながりを重視する産業界からは、長期的視点での利点が評価されつつあります。

「アセスルート」は、佐賀県の中心市街地に位置する佐賀駅を経由するルートです。整備延長は約50kmで、建設費は約6,200億円と見積もられています。所要時間は、佐賀〜博多間が約20分に短縮され、新大阪までは約2時間44分と、現行より最大で約30分の短縮が期待されます。投資効果(B/C)は3.1と高く、収支改善効果も年間約86億円と見込まれるなど、経済性の面では非常に有望なルートとされています。
このルートの特徴は、佐賀市の既存都市インフラを最大限に活用できる点にあります。佐賀駅は既に交通結節点として機能しており、鉄道・バスなどの二次交通との連携がスムーズであるため、観光客やビジネス客の移動効率を高められるメリットがあります。特に、鹿島市や太良町など有明海沿岸部への観光流入の促進が期待されます。
一方で、都市中心部を通過するため、支障物件の移転や騒音対策などの課題も存在します。しかし、完成後の影響範囲の広さや、3時間到達圏が関西地方まで広がることによる対象人口(約2,085万人)の増加など、佐賀県全体の交通利便性と経済波及効果を高めるルートであることは間違いありません。
最終更新日:2025年6月19日