2026年6月30日、横浜市中区・南区・磯子区にまたがる約43haの米軍根岸住宅地区が、戦後79年を経て日本へ返還されました。1947年の接収以来、地域を分断し続けてきた広大な土地が市民のもとへ戻ったことで、横浜市の都市づくりは歴史的な転換点を迎えています。返還跡地では、約50haを対象とした「(仮称)新根岸地区土地区画整理事業」が計画されており、住宅地や文教拠点、森林公園を一体的に整備することで、教育・研究・居住・自然環境が調和した新しい都市空間の形成を目指しています。
横浜市は2027年度の都市計画決定、2029年度の工事着手を目標としており、横浜都心部やみなとみらい地区とも連携する新たな都市拠点として期待されています。戦後長らく閉ざされてきた土地が、市民のためのまちへと生まれ変わる大規模プロジェクトがいよいよ本格的に始動します。
(仮称)新根岸地区土地区画整理事業の概要
1.戦後79年を経て実現した全面返還
1947年の接収から79年を経て、2026年6月30日に米軍根岸住宅地区約43haが全面返還。
横浜市の都市づくりが新たな段階へ進む歴史的な転換点。
2.約50haを対象とする大規模区画整理事業
返還跡地約50haを対象に、「(仮称)新根岸地区土地区画整理事業」を推進。
住宅・教育・自然が調和する新たな都市拠点の形成。
3.文教・住宅・公園を軸とした土地利用
文教ゾーン、住宅地等ゾーン、森林公園ゾーンの3つを中心に土地利用を計画。
教育研究機能と良好な住環境、豊かな緑が共存するまちづくり。
4.土地区画整理による都市基盤整備
道路や公園、上下水道などを一体的に整備し、土地を計画的に再配置。
利便性と安全性を高める都市基盤の構築。
5.防災性と環境性能を重視したまちづくり
広域避難場所の機能を維持しながら、避難路や緑地ネットワークを整備。
災害に強く環境負荷の少ない持続可能な都市空間の実現。
6.横浜市立大学を核とする新たな文教拠点
横浜市立大学医学部・附属2病院の再整備候補地として文教ゾーンを位置付け。
教育・研究・医療機能が集積する新たな学術拠点の創出。
7.2029年度工事着手を目指す今後の展望
2027年度の都市計画決定、2029年度の工事着手を目標に各種手続きを推進。
横浜都心部と連携し、市の成長を支える新たな都市拠点への発展。

2026年6月30日、米軍根岸住宅地区の全域が日本へ返還されました。根岸住宅地区は1947年10月16日に米軍へ接収され、以来約79年間にわたり横浜市内でも最大級の米軍住宅地区として利用されてきました。所在地は中区・南区・磯子区の3区にまたがり、面積は約43haに及びます。土地の内訳は国有地が約63.5%、民有地が約36.4%で、約180名の民間地権者が存在しています。
返還までには長い年月を要しましたが、2004年の日米合同委員会で返還方針が合意されたことを契機に、跡地利用の検討が本格化しました。その後、2015年には米軍関係居住者が全員退去し、2019年には原状回復を迅速に進めるための日米共同使用が合意されました。2020年からは防衛省による建物調査や解体工事が始まり、2026年3月には同年6月30日までの全面返還が正式合意され、ついに歴史的な返還が実現しました。


返還された土地では、「(仮称)新根岸地区土地区画整理事業」が計画されています。事業対象区域は約50haで、返還地に加えて周辺の非提供地も含めた広域的な都市基盤整備を行う計画です。環境影響評価の対象も約50haとなっており、道路や公園などの都市基盤整備を一体的に実施します。
計画地はJR根岸駅から北へ約1km、市営地下鉄ブルーライン吉野町駅から南へ約1kmの高台に位置しています。西側には国道16号、南側には国道357号、東側には横浜駅根岸線、北側には横浜鎌倉線が通る交通利便性の高い立地です。また、根岸森林公園や山手地区にも隣接し、横浜都心部やみなとみらい21地区にも近いことから、市内でも極めてポテンシャルの高い都市開発用地として位置付けられています。横浜市では、この広大な未利用地を活用することで、住宅供給だけでなく教育・研究、防災、公園整備など多様な都市課題の解決につなげることを目指しているとのことです。

「根岸住宅地区跡地利用基本計画」では、跡地を大きく3つのゾーンに分けて整備する方針が示されています。最も特徴的なのが「文教ゾーン」です。ここでは横浜市立大学医学部や附属2病院の再整備候補地として位置付けられており、教育・研究・高度医療機能を集積することで、横浜の新たな学術・医療拠点の形成が期待されています。また、大学以外の教育施設や産学連携機能についても今後検討される予定です。
「住宅地等ゾーン」では、山手地区や周辺環境と調和した質の高い低層住宅地を中心に整備されます。ゆとりある街区形成や良好な景観づくり、多世代が安心して暮らせる住宅地を目指しており、一部には中層住宅も計画されています。さらに「森林公園ゾーン」では、根岸森林公園を拡張し、公園機能を強化するものとされています。既存の公園や旧一等馬見所などとも一体的に利用できるよう回遊性を高め、市民が自然を身近に感じられる憩いの空間が創出されます。


新根岸地区では、都市基盤整備の手法として「土地区画整理事業」が採用されます。根岸住宅地区は国有地と民有地がモザイク状に入り組んでおり、そのままでは道路や公園、上下水道などの都市基盤を効率的に整備することが困難です。このため、土地の再配置(換地)を行いながら道路、公園、公共施設を計画的に整備し、残りの土地を地権者へ再配分する区画整理方式が最も適した事業手法とされています。
整備される道路は主要道路と生活道路を適切に配置し、自動車・歩行者双方が安全に利用できる道路ネットワークが構築されます。また、駅から約1km離れている立地特性を踏まえ、既存バス路線の延伸や新規バス路線の導入、自動運転やパーソナルモビリティなど次世代交通への対応も検討されています。都市基盤整備と合わせて用途地域や地区計画の見直しも進められ、良好な住環境を長期的に維持できるまちづくりルールの導入も予定されています。

新根岸地区では、防災機能と環境保全を両立した都市づくりが大きな柱となっています。根岸住宅地区は1972年から広域避難場所として指定されており、返還後もその機能を維持する方針です。周辺には木造住宅密集地域が広がることから、既存道路と地区内道路を接続し、安全な避難路を確保する計画となっています。また、広場や公園などのオープンスペースを配置することで、大規模災害時の避難機能が強化されます。
環境面では、根岸森林公園との連携による緑地拡充、生物多様性への配慮、緑の回遊空間の形成などが計画されています。斜面林の保全や街路樹整備、公園緑化などにより、都市部でありながら豊かな自然環境を維持することを目指すものとされています。

横浜市は今後、2027年度の都市計画決定、2029年度の工事着手を目標に事業を進める予定です。返還後は原状回復作業や環境影響評価、都市計画手続きなどを経て、本格的な区画整理工事が始まります。
完成後は、横浜市立大学を核とする文教・医療拠点、質の高い住宅地、拡張された根岸森林公園が一体となった新しい街が誕生する見込みです。さらに、横浜駅やみなとみらい21地区とも近接する立地を生かし、都心部との連携を深めることで、市全体の成長戦略を支える新たな都市拠点としての役割も期待されています。
戦後79年間にわたり市民が立ち入ることのできなかった土地が、教育・研究・居住・自然が融合した未来志向の街へと生まれ変わることになります。「(仮称)新根岸地区土地区画整理事業」は、単なる再開発ではなく、横浜の都市構造そのものを大きく変える歴史的プロジェクトとして、今後も大きな注目を集めそうです。
出典
・横浜市 米軍根岸住宅地区の返還が実現しました
・横浜市 根岸住宅地区の跡地利用
最終更新日:2026年6月30日