東京都が主体となり、港区・品川区・京浜急行電鉄株式会社と連携して進められている「京浜急行本線(泉岳寺駅~新馬場駅間)連続立体交差事業」は、都心に近い住宅地・業務地としての重要性を持つ地域において、鉄道と道路の安全性・効率性を大幅に向上させるための重要な都市基盤整備プロジェクトです。
事業の対象区間は約1.7kmにわたり、地下式、地表式、高架式の3つの構造形式を組み合わせて、従来の平面交差を立体的に改良していきます。立体交差化事業によって、通勤・通学時間帯において長時間遮断されることで知られていた「開かずの踏切」3か所が完全に除却され、地域住民や通行者の安全が大きく向上するほか、鉄道により分断されていたまちが一体となることで、都市の回遊性・連携性が強化されます。また、京急品川駅の地平化や東西自由通路の整備により、鉄道駅とまちとのアクセスが飛躍的に向上し、利用者にとってより安全で快適な都市空間が形成される見込みです。
→京浜急行電鉄株式会社 京浜急行本線(泉岳寺駅~新馬場駅間)連続立体交差事業
→東京都 京浜急行本線(泉岳寺駅~新馬場駅間)連続立体交差事業
→日本車輌製造株式会社 送り出し工法 (手延機による)
京浜急行本線(泉岳寺駅~新馬場駅間)連続立体交差事業の概要
- 事業の目的と背景
京浜急行本線(泉岳寺駅~新馬場駅間)で進められている連続立体交差事業は、「開かずの踏切」の除却や地域分断の解消、安全性・利便性の向上を目的とした、東京都主導の大規模な都市インフラ整備事業です。 - 対象区間と整備内容
全長約1.7kmにわたり、地下・地表・高架の複合構造によって鉄道と道路を立体化。踏切3か所の除却により、地域の回遊性と都市機能が大きく向上します。 - 駅周辺の再整備と利便性向上
京急品川駅は地上化され、東西自由通路の整備も行われることで、JR品川駅との乗り換え利便性が向上。駅周辺の歩行動線や景観が大きく改善されます。 - 工事の進め方と住民配慮
鉄道運行を継続しながら、影響を最小限に抑える段階的施工を採用。地域住民・関係者との丁寧な調整を行い、合意形成を重視しています。 - 特殊な施工技術の導入
八ツ山橋梁の架け替えには「送り出し工法」が採用され、狭隘な都市空間での安全かつ効率的な橋梁設置が実現されています。 - 交通・防災機能の強化
踏切の除却と立体交差化により、交通渋滞や事故リスクが軽減され、緊急時の避難や救急活動の妨げとなる要因も大幅に解消されます。 - 都市の魅力と持続性の向上
まちの一体化やアクセス改善により、都市の回遊性や国際都市としての魅力が向上。防災性・持続性を備えたスマートな都市づくりが進行中です。

泉岳寺駅から新馬場駅に至る約1.7kmの区間において実施されている連続立体交差事業は、東京の玄関口のひとつである品川エリアの交通機能を刷新し、都市の魅力をさらに高めることを目的とした大規模なインフラ整備です。
鉄道と道路の交差部を立体化することで、交通の円滑化と安全性の向上が同時に図られ、歩行者や自転車利用者にとっても快適で安心な移動環境が実現します。加えて、地域間の結びつきが強まり、生活圏の拡大や新たな都市活動の創出にもつながることが期待されています。


京浜急行本線(泉岳寺駅~新馬場駅間)連続立体交差事業では、都市の限られた空間を最大限に活用しながら、地形や既存施設との調和を図るため、地下・地表・高架の複合構造による立体交差が導入されています。京急の品川駅は、現在の高架レベルから、地平化し、デッキ上に改札が設けられ、国道上空デッキと接続されるほか、自由通路の延伸に合わせてバリアフリー動線が拡充されます。
このような多様な構造形式の導入により、鉄道や道路における運行・通行の安全性と効率性が向上し、災害時においても信頼性の高い交通ネットワークが確保されます。さらに、駅前広場や歩行者デッキの整備もあわせて実施され、まちの魅力や歩行者の利便性が大幅に向上することが見込まれています。

施工順序図です。まずは高架橋仮設化がされ、次にホーム階構築、上下線地平化切替が行われた後、コンコース階構築が行われ、完成へと至ります。

従来は高架構造にあった京急品川駅が地上化されることにより、駅周辺の景観や歩行動線が大きく変化し、地域全体の一体感が向上します。また、駅直上には超高層複合ビル「(仮称)品川駅街区地区」の建設が行われます。
あわせて、JR品川駅と京急線を結ぶ東西自由通路が拡幅・延伸されることで、鉄道利用者の乗り換え利便性が向上し、周辺のオフィス・商業エリアとの結びつきもより強固になります。駅周辺の再整備は、国際都市・東京の顔としてふさわしい先進的かつ快適な都市空間の実現につながります。


八ツ山橋梁の架け替え工事では、都市部の狭隘な作業空間に対応するため、「送り出し工法」と呼ばれる特殊な施工手法が採用されています。
これは、橋桁を地上で組み立てたのち、徐々に橋脚方向に押し出すことで設置を行う工法で、騒音や振動が少なく、作業時間の短縮にも寄与します。周辺住民の生活への配慮と、都市部ならではの制約への対応を両立させるための工夫です。

送り出し工法の最大の利点は、工事ヤードを長期間占用せずに済むため、既存道路や鉄道への影響を抑えながら橋梁を迅速に架設できる点にあります。
また、クレーンによる吊り上げを必要としないため、空間制約が厳しい都心部において、安全かつ効率的な施工が可能です。施工の各工程では、最新の技術とノウハウが活かされ、都市に調和したスマートな工事が行われています。

現在、組み立てられているトラス橋は全長約203mで、中央の本設トラス約100mの両側に仮設の前方仮設トラスと後方仮設トラスがあり、前方と後方の仮設トラスは、送り出しが完了した後、解体されます。

現在の八ツ山橋梁や踏切は、鉄道と道路が交差する重要な地点でありながら、慢性的な交通渋滞や安全性の課題を抱えていました。
今回の連続立体交差化により、これらのボトルネックが解消され、緊急車両の通行性や災害時の避難経路としての機能も大幅に向上します。あわせて、周辺のまちづくりとも連携し、防災性と都市の持続性を高める再構築が進行中です。
最終更新日:2025年4月18日