川崎市は、老朽化した中央卸売市場北部市場の再整備に向けた「川崎市中央卸売市場北部市場機能更新事業」の落札者を決定しました。本事業は、民間資金活用(PFI方式)によって設計・建設・維持管理を一体的に行う大規模プロジェクトで、代表企業には大和ハウス工業株式会社が選定されました。新市場は、食品流通の未来拠点・食文化の発信拠点・地域価値の向上を目指す「ONEいちば」構想を掲げ、全国に先駆ける先進的なモデルとなることが期待されています。
→川崎市 川崎市中央卸売市場北部市場機能更新事業の落札者が決定しました
川崎市中央卸売市場北部市場機能更新事業の概要
- 事業の目的と背景
老朽化した北部市場を再整備し、食品流通拠点としての機能を強化するとともに、市民に開かれた市場づくりを推進する事業。PFI方式を活用し、民間活力を導入。 - 落札者と事業体制
総合評価方式により、大和ハウス工業株式会社を代表とする企業グループが落札。東急、国分グループ本社、東光園緑化などが参画し、設計・建設・運営・管理を一体で実施。 - 整備される施設の概要
青果・水産・花きの各卸売施設に加え、食品流通施設やフードパークなどを整備。卸売機能と一般利用者向け機能を融合させた複合施設。 - 「ONEいちば」構想の特徴
市場流通と一般流通を一体化する全国初の試み。体験型食育施設や緑地との連携、防災拠点機能など、多機能型の先進的市場構想。 - 事業スケジュール
2025年に基本協定・仮契約、同年12月に本契約予定。施設整備は2037年まで、維持管理は2057年までを想定。 - サステナビリティへの対応
再生可能エネルギーや省エネ設備の導入による環境負荷の軽減。持続可能な市場運営を目指した設計・運用。 - 防災機能と地域との連携
災害時の備蓄・避難機能を備えたレジリエンス型施設。地域社会との連携による安心・安全な拠点形成。

本事業は、2024年3月に川崎市が策定した「北部市場機能更新に係る基本計画」に基づき、施設の老朽化への対応や社会・経済環境の変化を踏まえた機能強化を目的としています。食品流通拠点としての機能強化、市民に開かれた親しみやすい市場づくり、持続可能な運営体制への転換などが主な課題です。これらの課題解決に向け、民間事業者のノウハウや創意工夫を取り入れるPFI方式が採用されました。


今回の総合評価一般競争入札には2グループが参加し、最優秀提案者として代表企業「大和ハウス工業株式会社」を中心とするグループが選定されました。主な構成員には東急株式会社、国分グループ本社株式会社、富士通株式会社、株式会社久米設計などが名を連ねており、建設・設計・維持管理から通信インフラ整備に至るまで多様な企業が協力体制を敷いています。評価点は808.0点(1,000点満点中)で、2位グループ(669.6点)を大きく上回る結果となりました。落札金額は約604億円です。

整備される施設には、青果・水産・花きなどの卸売市場機能施設に加え、市の事務所や食品衛生検査所を含む管理施設、冷蔵庫や駐車場などの付帯施設が含まれます。さらに、食品流通施設やフードパークといった市場機能連携施設も設けられる予定です。これにより、従来の卸売機能を越えて、一般消費者や地域住民が食を楽しめる場へと発展します。


落札者グループが提案した「ONEいちば」構想は、市場流通と一般食品流通を一体化した全国初の取り組みです。食品の加工・流通・販売の各段階をひとつの施設に集約することで、流通の効率化と利便性を図ります。さらに、フードパークでは体験型プログラムや食育活動を通じて、食文化の継承や市民参加型の賑わい創出を目指します。また、隣接する菅生緑地との連携により、自然との共生や防災機能の強化も図られます。

今後は、2025年8月上旬に基本協定を締結し、同年10月中旬に事業仮契約を締結する予定です。その後、12月には本契約締結に向けて市議会の議決を経て、正式な契約が結ばれる見込みです。設計・建設期間は契約締結から2037年3月までを予定し、維持管理は2037年以降2057年3月まで続きます。さらに、一部施設では付帯事業者による定期借地契約によって、市場連携施設の運営が行われる計画です。

川崎市中央卸売市場北部市場は、開場から41年が経過して老朽化や社会経済環境の変化に対応するため、市場機能の全面的な見直しと再整備が必要であると判断されました。これにより、単なる施設更新にとどまらず、将来的に持続可能な運営体制への転換も図る方針です。こうした背景を踏まえ、市場として求められる機能や規模、施設整備の方向性、土地活用の方針、事業の進め方などを整理した「基本計画」が策定されました。
最終更新日:2025年6月3日