2025年6月5日、山梨県は富士山新交通システム(仮称:富士トラム)に関する令和6年度の調査結果を公表しました。従来構想されていたLRT(次世代型路面電車)方式に代わり、磁気マーカによる誘導を用いたゴムタイヤ式の交通システム「富士トラム」が導入候補として浮上しています。富士スバルラインの厳しい地形条件や環境負荷への配慮、費用面での優位性を踏まえた結果、富士トラムが最も適していると判断されました。今後も採算性などの詳細について継続的な調査が行われる予定です。
→山梨県 (仮称)富士トラム
→山梨県 (仮称)富士トラム(富士山登山鉄道構想)
富士山新交通システム(仮称:富士トラム)の概要
- 発表日と内容
2025年6月5日、山梨県が富士山新交通システム(仮称:富士トラム)に関する最新の調査結果を公表。 - 交通方式の転換
従来のLRT方式から、ゴムタイヤ式の「富士トラム」への導入方針への変更。 - 誘導方式と特徴
磁気マーカによる誘導走行、架線不要の電動式という特徴を持つシステムである。 - 地形・環境への適合性
急勾配や自然環境への対応力の高さが評価されたことによる方式選定。 - コスト面の優位性
LRTと比較して建設・運行コストが大幅に低減可能である点が強み。 - 利便性と将来性
高い輸送力、バリアフリー、自動運転対応などの利便性と先進性。 - 今後の予定
採算性や運行体制の詳細検討を経たうえで導入可否を判断予定。

富士山へのアクセス向上を目的とした登山鉄道の構想は20世紀半ばから繰り返し提唱されてきました。中でも富士急行グループが意欲的で、多くの構想に関与してきましたが、河口湖駅から五合目まではバス等での移動が必要な状況が続いています。2019年には「富士山登山鉄道構想検討会」が発足し、当初はLRTによる導入が検討されました。しかし2024年11月、山梨県はLRTなどの鉄軌道方式を断念し、より柔軟で低コストなゴムタイヤ式の交通手段へ方針を転換しました。

富士トラムは、磁気マーカや白線を利用した誘導方式により走行するゴムタイヤ式車両です。架線不要の電動走行が可能で、環境保護や景観への配慮も実現しています。連節車体による高い輸送力(最大120座席)、双方向運転による災害時の柔軟な対応、バリアフリー対応の低床車体など、利用者と地域双方にとって利便性の高い特徴を備えています。屋根上には蓄電池と燃料電池を併用する構造を想定しており、富士スバルラインの往復に必要な電力も十分にまかなえる見通しです。

令和6年度の比較調査では、LRTや白線誘導バスなど5つの交通方式が検討されましたが、富士トラムが総合的に最も優位と評価されました。導入費用はLRTに比べて5割以上低く、年間の運行コストも抑えられるとされています。拡張性や自動運転導入の可能性、省人力化による効率性、観光資源としての先進性など、多くの点でメリットが確認されました。EVバスも将来的には候補となり得ますが、現時点では富士トラムが最適な選択肢とされています。山梨県は今後も採算性や運行体制の検討を進めていく方針です。
最終更新日:2025年6月10日