さいたま市は、旧大宮区役所跡地や大宮小学校跡地を含む大宮駅東口周辺において「駅前賑わい拠点」としての整備を進めるため、令和7年8月に「大宮駅東口周辺 公共施設再編 駅前賑わい拠点 実施方針」を公表しました。本方針は、平成22年に策定された「大宮駅周辺地域戦略ビジョン」や、平成30年の「公共施設再編/公共施設跡地活用全体方針」を継承しつつ、民間のノウハウを積極的に取り入れ、歴史・文化・自然環境を融合させた拠点づくりを進めるものです。単なる再開発にとどまらず、地域住民や来街者が快適に過ごせる空間を形成し、交流や文化発信、防災拠点としての機能を兼ね備えた「東日本の顔」にふさわしい都市づくりを目指しています。
→さいたま市 「大宮駅東口周辺 公共施設再編 駅前賑わい拠点 実施方針」を策定しました
大宮駅東口周辺 公共施設再編 駅前賑わい拠点 実施方針の概要
- 実施方針の公表
大宮駅東口周辺における公共施設再編と駅前賑わい拠点整備の実施方針の公表 - これまでの経緯
地域戦略ビジョンや公共施設再編方針を継承した計画策定の経緯 - 民間活力の活用
公民連携による効率的かつ持続可能な拠点整備の推進 - 歴史・文化・自然の融合
氷川神社や氷川参道を活かした歴史・文化・緑の調和 - 公共施設の再編と防災強化
老朽施設の更新と災害時の防災拠点機能の確保 - 交流・文化発信の場づくり
市民や来街者が集う広場や文化交流拠点の形成 - 目指す都市像
「東日本の顔」にふさわしい交流・文化・安全性を備えた都市拠点の実現

大宮駅周辺では長年にわたり「東日本の顔となるまち」を掲げた都市づくりが進められてきました。平成30年の全体方針では、旧大宮区役所跡地や大宮小学校跡地を「駅前賑わい拠点」として明確に位置付け、将来の活用方針を示しました。
その後、令和4年には骨子案を策定し、民有地との一体的な開発や暫定的な土地活用、防災・文化継承といった視点を取り入れました。今回の実施方針は、これらをさらに具体化し、市民・権利者・民間事業者が共通認識を持ちながら取り組むための基礎的な指針となっています。目的は単に施設の建て替えではなく、駅前空間の質を高め、大宮の将来像を実現することにあります。

本方針は「さいたま市総合振興計画」「都市計画マスタープラン」といった上位計画と整合しており、大宮駅東口を市全体の都心形成における重要拠点として明確に定義しています。また、大宮グランドセントラルステーション(GCS)化構想とも密接に関連しており、駅前広場機能の再配置や集約型駐車場整備、バリアフリー動線の確保など、広域交通拠点の整備と連動する形で進められます。すなわち、単独の再編事業ではなく、駅全体の将来像に統合された都市再生の一環として位置付けられています。

大宮駅東口拠点は、複数の関連計画の中で重要拠点として位置づけられています。都市計画マスタープランでは「みどりのシンボル核」として、都市環境の再生や景観形成を担う役割を持ち、戦略ビジョンでは「おもてなしひろば」「杜のひろば」として駅前から氷川参道へとつながる回遊動線の核となることが示されています。さらに都市再生緊急整備地域に指定されていることから、防災機能や安全性の向上も不可欠です。加えて「さいたま新都心将来ビジョン」とも連携し、広域的な歩行者ネットワークや避難経路の整備を推進することで、駅周辺の回遊性と防災性を兼ね備えたまちづくりが目指されます。

現状の大宮駅は、JR東日本や私鉄を含む13路線が乗り入れる国内有数のターミナル駅であり、1日の利用者数も全国トップクラスです。しかしその一方で、駅東口周辺の人の流れは限定的で、にぎわいの分布に偏りが見られます。老朽化した建物や防災拠点の不足も大きな課題となっています。ただし、この地域には氷川神社や氷川参道、大宮小学校跡地といった歴史・文化資源が残されており、これらを活用することで新たな魅力を創出する可能性があります。課題は回遊性の強化、防災・減災の観点からの拠点整備、地域の歴史文化を未来へ継承することに集約されます。

実施方針では8つの柱が掲げられています。①公共施設の計画的・効果的な更新、②民有地と連携した一体的まちづくり、③駅東口全体の再編方針との整合、④民間活力を取り入れた事業推進、⑤訪れる人が目的を持って集う拠点形成、⑥防災拠点としての機能確保、⑦教育環境の早期更新、⑧市有地の有効利用です。これらを踏まえたコンセプトは「人が集い、歴史と未来が交差するにぎわい拠点」であり、地域資源を活かした交流と文化発信の場、そして災害時には市民の命を守る防災拠点となる空間を目指しています。都市的なにぎわいと緑豊かな環境の調和を意識したデザインも大きな方向性のひとつです。

今後の事業展開は、旧大宮区役所跡地を中心に暫定活用を取り入れながら段階的に進められます。公民連携(PPP/PFI)など民間活力の導入が検討され、市民参画の機会を確保することで、まちづくりに対する理解と合意形成を深めていきます。災害時の避難スペースや備蓄倉庫などの整備も並行して行われ、日常時は憩いや文化活動の場、非常時には防災拠点となる「二重の役割」を果たすことが期待されます。さらに緑豊かな歩行者空間や広場を設けることで、駅前空間全体の魅力を高め、都市の玄関口にふさわしい環境を整備する計画とされています。
最終更新日:2025年10月11日

