東京都は2026年6月、渋谷区神宮前五丁目で進める「神宮前五丁目地区まちづくり事業」の事業実施方針を公表しました。対象となるのは、2015年に閉館した国立児童館「こどもの城」や青山病院跡地、コスモス青山などを含む約4.5haの都有地で、このうち約3.8haを活用した大規模再開発が計画されています。
事業では「誰もが集い・つながる、開かれた『智の創造拠点』」を将来像に掲げ、老朽化が進む都立中央図書館の移転をはじめ、劇場やスタートアップ支援、国際交流、女性活躍支援、子どもの体験機会創出など多様な機能を導入します。旧こどもの城は解体されますが、その理念や役割を継承した新たな文化・交流拠点へと再生される計画です。今後は2027年春頃に募集要項を公表し、2028年春頃の事業予定者決定を目指しています。現地では既に再開発に向けた準備が進み、旧こどもの城の仮囲いには「TOKYO CITY CANVAS」によるアートが展示されています。
神宮前五丁目地区まちづくり事業の概要
1.神宮前五丁目地区まちづくり事業の概要
東京都は2026年6月、神宮前五丁目地区まちづくり事業の事業実施方針を公表。
旧こどもの城や青山病院跡地など約3.8haの都有地を活用する大規模再開発計画。
2.目指す将来像「智の創造拠点」
将来像として「誰もが集い・つながる、開かれた『智の創造拠点』」を設定。
交流や創造活動を通じて新たな価値を生み出す東京の新たな知的交流拠点。
3.都立中央図書館の移転整備
老朽化や書庫不足が課題となっている都立中央図書館を移転整備。
「Library for Creation」をコンセプトとした創造・交流図書館の整備計画。
4.劇場を含む多様な導入機能
図書館に加え、劇場や女性活躍支援、スタートアップ支援などを導入。
文化・教育・ビジネス・国際交流が融合する複合拠点の形成。
5.子どもの体験機会創出機能
旧こどもの城が担ってきた役割を継承し、子ども向け機能を整備。
乳幼児から中高生までを対象とした多様な学びと体験の創出。
6.旧こどもの城の再構築方針
旧こどもの城の建物は解体する一方で、その理念や歴史を継承。
子どもの健全育成や文化発信の機能を発展させる新たなまちづくり。
7.現地の状況と今後のスケジュール
現地では仮囲いを活用した「TOKYO CITY CANVAS」のアート展示を実施。
2027年春頃の事業者公募開始と2028年春頃の事業予定者決定に向けた準備段階。

神宮前五丁目地区まちづくり事業は、東京都が進める「都市再生ステップアップ・プロジェクト」の第3弾として位置付けられています。対象地は渋谷駅と表参道駅、原宿駅を結ぶエリアの中間に位置し、渋谷・青山・原宿の結節点として高いポテンシャルを持つ立地です。周辺には文化施設や教育機関、商業施設、スタートアップ支援拠点などが集積しており、多様な人々が行き交う活気ある都市空間が形成されています。

東京都は、これまで個別に運用されてきた旧こどもの城、コスモス青山、青山病院跡地を一体的に活用することで、土地の価値を最大限に引き出し、新たな交流や創造活動を生み出す拠点を形成する方針です。単なる再開発ではなく、東京の未来を担う人材や文化を育む新しい都市モデルとして位置付けられている点が特徴といえます。

今回の計画の中心となるのが、港区有栖川宮記念公園内にある都立中央図書館の移転です。現在の図書館は開館から半世紀以上が経過し、施設の老朽化や書庫不足が深刻化しています。また、現在地では建て替え時の長期休館や敷地条件による規模拡大の制約があり、新しい時代に対応した図書館づくりが難しい状況にありました。

新たな図書館は「Library for Creation(創造・交流図書館)」をコンセプトとし、従来の図書館機能を大きく発展させる計画です。膨大な蔵書や調査研究支援機能を維持しながら、人々の知的好奇心を刺激し、交流や創造活動を促す場として再構築されます。また、多様な知識や情報を発信する機能も強化され、単なる読書や調査研究の場ではなく、新たなアイデアや文化が生まれる創造拠点としての役割を担うことになります。


神宮前五丁目地区では、図書館だけではなく、多様な機能を集積させることで相乗効果を生み出すことが目指されています。その中でも注目されるのが劇場機能の整備です。旧こどもの城には青山劇場や青山円形劇場が併設され、多くの舞台芸術や文化活動の発信拠点として親しまれてきました。新たなまちづくりでもその歴史を受け継ぎ、文化芸術を通じて人々の感性や創造性を育む空間が整備される予定です。


さらに、女性活躍支援機能やスタートアップ支援機能、国際交流機能なども導入されます。起業家育成やアントレプレナーシップ教育を通じて新たなビジネスやイノベーションを生み出すとともに、国連大学との連携により国際的な知の交流も促進されます。こうした多彩な機能が連携することで、神宮前五丁目地区は文化・教育・ビジネスが融合する新たな都市拠点へと生まれ変わろうとしています。

旧こどもの城は1985年の開館以来、子どもの健全育成や文化活動の拠点として長年親しまれてきました。東京都は建物自体については解体する方針を示していますが、その役割や理念については新しいまちづくりの中で継承するとしています。
計画では「こどもの体験機会創出機能」を地区全体に導入し、乳幼児から中高生まで幅広い世代の子どもたちが様々な体験活動に参加できる環境を整備します。学びや遊び、創作活動を通じて子どもの可能性を広げるだけでなく、保護者同士の交流や地域コミュニティ形成の場としても活用される予定です。
また、東京都は子どもたちの意見を計画に反映するため、約1,200人を対象としたアンケートやワークショップを実施しました。今後も継続的に子どもや若者の声を取り入れながら施設計画を発展させる方針であり、利用者目線を重視したまちづくりが進められます。

2026年6月時点の現地では、旧こどもの城の建物は仮囲いによって覆われており、解体工事の着手を待つ状態となっています。その仮囲いでは東京都の文化プロジェクト「TOKYO CITY CANVAS」が実施されており、工事現場そのものを新たな文化発信の場として活用しています。
公開されている作品は、絵本作家・荒井良二氏による代表作「はっぴぃさん」をモチーフとした『はっぴぃさん Theater』です。全8幕で構成された舞台のようなアートが約140メートルにわたる仮囲いに描かれ、地域の子どもたちが寄せた願いごとも作品の一部として取り込まれています。再開発が始まるまでの期間を単なる工事準備期間とするのではなく、地域とのつながりを維持しながら新たな魅力を発信する取り組みとなっています。

今後は2027年春頃に事業者公募の募集要項が公表され、同年冬頃に提案審査が行われる予定です。その後、2028年春頃に事業予定者が決定される見込みです。渋谷・青山・原宿を結ぶエリアにおいて、東京の新たな文化・交流拠点となる大規模プロジェクトとして、今後の動向に大きな注目が集まります。
最終更新日:2026年6月15日