シンガポールのチャンギ国際空港では、今後の航空需要の増加に対応するため、ターミナル5(T5)の本格的な建設工事が始まります。チャンギエアポートグループ(CAG)は2025年5月5日、T5の基礎工事および空港制限区域(エアサイド)インフラ整備に関する契約を締結したことを発表しました。総額約64億シンガポールドル(約7,000億円)に及ぶこの契約は、T5の建設における重要な節目であり、2025年半ばから始まる工事は、シンガポール史上最大規模の空港拡張プロジェクトとして注目されています。
ターミナル5は、現在の空港施設に加えて年間5,000万人の旅客を受け入れることが可能となる新しい中枢拠点です。完成は2030年代半ばを予定しており、国際航空ネットワークのさらなる強化と経済成長への寄与が期待されています。
→チャンギ・エアポート・グループ チャンギ空港グループがチャンギ空港ターミナル5の下部構造とエアサイドインフラ工事を受注
シンガポールのチャンギ国際空港の概要
- チャンギ空港T5建設の開始
シンガポールのチャンギ国際空港は、将来の航空需要に対応するため、年間5,000万人の旅客を収容可能な新ターミナル「T5」の建設に着手。総額約64億シンガポールドル(約7,000億円)の契約が締結され、2030年代半ばの完成を目指す。 - 大規模な基礎構造工事
中国交通建設公司(CCCC)と大林シンガポール社のJVが、38億シンガポールドル規模の契約で、T5の基礎・地下階、トンネル建設などを担当。工事エリアは140ヘクタール、地下深度は最大28メートルに達する。 - エアサイドインフラの整備
地元企業ファ・セン・ビルダー社が、9億5,000万シンガポールドルでリモートスタンドや接続タクシーレーン、電力・照明施設の整備を担当。航空機の安全かつ効率的な運用を支える重要なインフラとなる。 - 信頼ある施工企業の採用
工事を担当する企業は、いずれもチャンギ空港内での施工実績があり、空港建設における信頼性と高い技術力を評価された。 - T5はチャンギ・イースト開発の中核
T5は第3滑走路や貨物施設などを含む「チャンギ・イースト開発計画」の中心的存在で、空港の機能拡張と都市としての発展を支える鍵と位置づけられている。 - コロナ禍での一時中断と再設計
2020年にパンデミックの影響でプロジェクトが一時停止。2年の見直し期間を経て、災害への強靭性や環境配慮、モジュール化設計を取り入れて再始動。 - シンガポールの航空ハブ強化へ
T5完成後、チャンギ空港全体で年間最大1億5,000万人の旅客受け入れが可能となり、シンガポールの国際的な航空競争力と経済発展への貢献が期待されている。

T5の基礎構造工事は、シンガポールにおける中国交通建設公司(CCCC)の現地法人と、日本の大林組の現地法人である大林シンガポール社によるジョイントベンチャーに発注されました。この契約は約38億シンガポールドル(約4,200億円)にのぼり、T5の旅客ターミナルおよび地上交通センターの基礎・地下階の建設、さらにT5と既存のターミナル2を結ぶ連絡トンネルの一部が含まれます。
工事対象エリアはおよそ140ヘクタールに及び、地下最大深度は28メートルに達します。これは、オリンピックサイズの水泳プール約5,200個分に相当する大規模な地下構造となる見込みです。CCCCはこれまでにもチャンギ空港内でタクシーウェイや地下車両トンネルの建設を担当しており、大規模インフラ整備において世界的な実績を誇ります。一方、大林シンガポール社は、同空港の管制塔や商業施設「ジュエル・チャンギ空港」の建設に関わってきた経験があり、その技術力と施工品質の高さが評価されています。

エアサイドにおけるインフラ整備工事は、シンガポールの建設会社Hwa Seng Builder(ファ・セン・ビルダー)社が担当することになりました。契約金額は約9億5,000万シンガポールドル(約1,050億円)で、主にリモート航空機スタンド(駐機場)や接続タクシーレーン、さらに付帯施設(変電所や航空灯火制御センターなど)の建設が含まれます。
タクシーレーンとは、主タクシーウェイと航空機の駐機エリアを結ぶ短い連絡路のことです。これらの整備は、航空機のスムーズな誘導と運用効率の向上に直結する重要なインフラです。ファ・セン・ビルダー社はこれまでにもチャンギ空港やセレター空港での建設実績があり、地元企業ならではの機動力とノウハウを活かして、精度の高い施工が期待されています。
ターミナル5は、チャンギ空港の「チャンギ・イースト開発計画」の中核を担うプロジェクトです。この計画には、T5のほかに第3滑走路や貨物施設、航空・地上輸送の支援インフラなどが含まれており、空港全体の機能拡張と持続可能性の両立を目指しています。
このT5計画は2013年に策定され、2014年から土地造成や設計作業が開始されました。2018年にはマスタービルディングコンサルタントおよび土木設計コンサルタントが任命され、総合的な開発体制が整えられました。しかし、2020年に新型コロナウイルス感染症の影響を受け、T5プロジェクトは一時的に2年間停止されました。この期間中にプロジェクトの見直しが行われ、よりモジュール化された設計、災害への強靭性、環境負荷の軽減などを盛り込んだ計画として再始動しています。
2022年には工事再開が正式に発表され、2025年半ばから建設が始まることになりました。シンガポール政府はこの開発を、経済成長と航空ハブ機能の強化の象徴と位置づけています。将来的には、チャンギ空港全体で年間1億4,000万人から1億5,000万人の旅客を受け入れる体制が整う見込みであり、シンガポールのグローバルな航空競争力がさらに高まると期待されています。
チャンギビジネスパーク(CBP)

チャンギビジネスパーク(CBP)は、シンガポール東部のチャンギ・サウスに位置し、1997年に開業、2012年に完成しました。広さ71.07ヘクタールの敷地に、ハイテクビジネスや研究開発施設が集まり、チャンギ空港や航空地区、物流施設に近いため、企業の輸送・物流コストの削減が可能です。また、MRTエキスポ駅やパンアイランドエクスプレスウェイを利用して、セントラルビジネスディストリクトへのアクセスも便利です。
オフィスビル、ショッピングモール、ホテルが整備され、アセンダスランドとフレイザーズセンターポイントの合弁事業で進められました。施設内には、チャンギ・シティ・ポイント・モールやフィットネス施設、パーク・アベニュー・ホテルなどが併設され、働く人々や訪問者にとって便利な環境が提供されています。
IBM、ミズノ、ネスレ、シティバンク、JPモルガンなどの企業がオフィスを構え、シンガポール工科大学(SUTD)も所在しています。さらに、シンガポールエキスポが近く、国際的なイベントの開催地としても注目されています。今後、交通インフラや新たな施設が整備され、さらに発展が期待される重要なビジネス拠点です。
最終更新日:2025年5月8日