町田駅周辺は、1970年代から80年代にかけて国鉄原町田駅の移転に伴い大規模な再開発が行われて以来、約50年が経過しました。その間、駅周辺の施設は徐々に老朽化し、また多摩都市モノレールの町田方面延伸計画という新たな交通インフラの整備計画も進んでいます。こうした環境の変化を背景に、民間事業者の開発意欲が一段と高まってきました。
これを受け、町田市では「町田駅周辺開発推進計画」を策定し、駅周辺の個性豊かな店舗や賑わいある商店街など、今の町田の魅力を活かしつつ、さらに多様な機能と魅力を備えたまちへと転換することを目指しています。この計画は、有識者やまちづくり関係者、事業者などの幅広い意見を集約し、2022年10月に設置された検討委員会で4回の会議を経てまとめられ、市民からの意見も反映して最終的に策定されました。
→町田市 町田駅周辺開発推進計画
→町田市 「JR町田駅南地区まちづくり整備方針」に関すること
町田駅周辺開発推進計画の概要
1. 町田駅周辺の再開発の背景
1970〜80年代に大規模再開発が行われたが、50年を経て施設の老朽化が進行。モノレール延伸など新たな変化を背景に、地域全体の機能更新が急務となっている。
2. 計画の目的と方向性
町田市の魅力である個性的な商店街や文化を活かしつつ、官民連携で多機能かつ魅力的な都市空間を創出し、都市としての競争力とブランド力の維持・強化を目指す。
3. 開発推進の高まりと市民の参加
地権者・住民・事業者が主体となる勉強会や意見交換が活発化。市民や関係者の声を反映しつつ、共通の開発指針を策定。
4. 多摩都市モノレール延伸への対応
延伸計画により町田駅が起終点となるため、駅周辺の交通インフラや歩行空間の再整備が必要。基盤整備による利便性向上を図る。
5. 他都市との競争と都市間連携
周辺の橋本、相模原、立川などで大規模再開発が進む中、町田も独自の魅力と機能を強化し、エリア全体の中での存在感を高める必要がある。
6. 町田駅周辺の現状課題
駅周辺の視認性の低さ、滞在空間の不足、施設の老朽化、交通の不便さなどが課題。他都市に比べて都市機能の多様性も不足している。
7. 開発コンセプトと将来像
「いつだってまちだ~新たな賑わいと交流の創出~」を掲げ、交通利便性の高い駅前空間にエンタメ要素や快適な空間を融合し、多様な人々を惹きつけるまちを目指す。

町田駅周辺は、鉄道開業前から交通の要所として多くの人が行き交い、様々な文化が混ざり合う活気ある街並みが形成されてきました。1960年代の急激な人口増加を背景に、1970年代から80年代にかけて国鉄原町田駅の移転と大規模商業ビルの建設が進み、駅周辺は大規模商業施設と賑わいあふれる商店街が共存する、首都圏南西部を代表する商業集積地へと成長しました。
しかし、約50年が経過した今、駅周辺の施設は老朽化が進み、新たな時代のニーズに応えるための大規模な機能更新が急務となっています。2021年12月には多摩都市モノレールの町田方面延伸ルートが決定し、モノレールの起終点となる町田駅周辺では道路ネットワークや歩行者空間の再整備も必要となってきました。

これまで町田市は、2016年に「町田市中心市街地まちづくり計画“夢かなうまちへ”」を策定し、地元関係者と協力しながら10のプロジェクトを展開してきました。さらに、2022年には「都市づくりのマスタープラン」を策定し、町田駅周辺を多機能でウォーカブルなまちへ転換する重要なエリアとして位置付けました。
周辺の主要都市では新たな駅前開発や大型商業施設の開業が進み、町田駅周辺の優位性は相対的に低下しつつあります。このままでは、町田が長年築いてきた魅力やブランド力が埋没してしまう懸念もあります。そこで、町田らしい個性的な店舗や活気ある商店街の資源を活かしつつ、官民連携による魅力的なまちづくりを推進するための共通指針として「町田駅周辺開発推進計画」が策定されました。


近年、町田駅周辺の複数の地区で再開発に向けた機運が高まっています。地元の地権者や事業者、住民を交えた勉強会や意見交換会が活発に開催され、駅周辺の一体的な開発による街の向上への期待が高まっています。
特に、駅周辺を一体的に捉え、繋がりのあるまちづくりを推進するためには関係者間で共通の認識や指針が必要不可欠です。こうした状況を踏まえ、本計画はまちづくり関係者が共通の方向性を持ち、連携して開発を進めていくための基盤となります。

町田駅周辺は、現在進められている多摩都市モノレールの町田方面延伸という大きな変化の中心地となります。この延伸に伴い、駅前の交通ターミナルやペデストリアンデッキなどの交通基盤の再整備が必要です。
新たな鉄軌道の接続により、駅周辺の交通の利便性や歩行者空間の快適性を大幅に向上させることが期待されています。このため、道路の整備や公共交通の乗り換え機能の強化、バリアフリー化など、幅広い視点からの基盤見直しが計画に盛り込まれています。

町田駅周辺がある首都圏南西部では、橋本駅や相模原駅、海老名駅、立川駅などで大規模な都市開発や機能更新が活発に進んでいます。
例えば、橋本駅南口では産業活性化と交流促進を目指したまちづくりが進められ、相模原駅北口では広域防災拠点としてのスポーツ・レクリエーション施設が順次開業中です。海老名駅周辺では大規模商業施設とオフィスビルの建設が進み、立川駅周辺には多目的ホールや高級ホテル、観光施設が集積しています。
これらの都市開発が進む中、町田駅周辺も競争力を維持・向上させるためには、既存施設の更新や機能強化が不可欠です。

町田駅周辺は、首都圏南西部の主要駅の中でも乗降客数が最も多い一方で、駅利用者のうちまちなかへの来街者割合は他駅に比べて低いという課題があります。駅周辺の建物が密集して視認性が低いことや、駅前に十分なオープンスペースや休憩場所が不足していることも影響しています。
また、小田急線東口やJR横浜線北口を中心に商業施設の老朽化が進んでおり、ペデストリアンデッキも交通需要やバリアフリー対応が追いついていません。バスの乗降場も分散して混雑が起きているため、公共交通の利便性向上も求められています。
さらに、首都圏南西部の他の駅前が多様な都市機能を導入しているのに対し、町田駅周辺ではそれらに匹敵する特色ある機能が不足している点も大きな課題です。

開発推進地区においては、各エリアの特性を活かしつつ、まちに賑わいと人々の交流をもたらす機能を段階的に導入し、町田の未来に向けたまちづくりが進められています。
まず、町田モディや東急ツインズがあるA地区では、3つの鉄道路線が交差するという地理的特性を活かし、新たな交通結節点として「交通ターミナル」の整備が計画されています。このエリアは町田の「シンボル」としての役割を担い、周辺の商業エリアと一体となって賑わいと調和のある空間を形成することが目指されています。導入機能としては、新交通ターミナルのほか、バス待合所、多摩都市モノレールの町田駅新設が想定されています。
西口の西側、駐車場などが広がるB地区は、「駅前の顔」としての新たな賑わいの創出がテーマです。ここには、これまでの町田にはなかったような集客機能が導入され、駅前にふさわしい空間と施設が形成される予定です。また、多様化するワークスタイルやライフスタイルに対応できる都市空間の再構築も検討されており、シネマコンプレックスなど、エンタメ性の高い施設の整備が構想されています。D地区とのシームレスな回遊性も意識され、駅前の活性化を牽引する役割が期待されます。

西友や町田パリオのあるC地区では、「交流拠点」として町田らしい文化や学びの発信に重点が置かれています。劇場やアートギャラリーなど、文化施設の導入を通じて、人々が自然に集い、交流する場の創出が目指されています。また、世代を超えて誰もが自由に学び、関わることのできる教育・文化施設の整備も想定されており、ライブホールやミュージックホールといった新たな魅力の核が導入される計画です。
森野住宅のあるD地区は、多摩境川沿いの広大なオープンスペースを活かした「憩いと賑わいの空間」として整備されます。ここでは緑と水辺の環境を最大限に活かし、町田駅前にはこれまでなかった新たな集客機能を備えた空間が創出されます。芝生広場や屋外ステージなどが設置され、地域資源を活用したマルシェや文化イベントなど、多彩な活動が展開される予定です。B地区との連携も図られ、まち全体の一体的なにぎわい形成が進められます。

「いつだってまちだ ~新たな賑わいと交流の創出~」をテーマに、町田駅周辺はこれからも多くの人々に「町田に行ってみよう」「町田で集まろう」と思ってもらえるまちづくりを目指します。
現代はオンラインで多くのことが完結する時代ですが、その一方で人々はリアルな場での非日常的な体験や感動を求めています。町田駅周辺は3つの鉄軌道とバスが交差する交通拠点として、快適で使いやすい駅前空間を創出し、従来の商業の賑わいに加え、映画や音楽、スポーツなどのエンターテインメント要素を取り入れて新たな魅力が生み出されます。
最終更新日:2025年6月17日