神奈川県の主要ターミナルのひとつ、海老名駅(相鉄線)では、鉄道利用者の増加や駅周辺の再開発に対応するため、抜本的な駅舎改良工事が進められています。このプロジェクトは、相模鉄道と海老名市が連携し、相鉄グループの「デザインブランドアッププロジェクト」の一環として、デザイン性と機能性を両立した駅づくりを目指すものです。
施設のバリアフリー化や安全設備の拡充に加え、保育施設などの生活支援機能を盛り込むことで、単なる交通拠点を超えた地域密着型の複合拠点へと生まれ変わろうとしています。2015年から段階的に工事が進められており、一部はすでに供用を開始。最終的な完成時期は2026年度末を見込んでいます。
→相模鉄道株式会社 「デザインブランドアッププロジェクト」のコンセプトで相鉄線海老名駅をリニューアル
→相模鉄道株式会社 海老名駅改良工事のスケジュールについて
相鉄線海老名駅改良工事の概要
- 改良工事の目的
駅利用者の増加や周辺の再開発に対応し、安全性・快適性・利便性を向上させるために、駅舎の全面的なリニューアルを実施。 - 工事内容
駅舎を2階建てから3階建てに拡張し、北口・中央改札の新設、保育施設・商業施設の導入、ホームドア設置、連絡通路の整備などを実施。 - 進捗とスケジュール
2015年に着工し、2023年に北口改札が先行開業。今後は2025年に中央改札の供用開始、2026年度末の全面完成を予定。 - デザイン・空間コンセプト
相鉄のブランドアップ戦略に基づき、水野学氏と洪恒夫氏が監修。素材感と現代性を両立したデザインで、駅を地域の「顔」として演出。 - 事業体制と費用
海老名市地域公共交通協議会が事業主体。総事業費は約50億円で、国・自治体・相鉄が1/3ずつ負担。官民連携のモデル事業。 - 生活支援機能の強化
改札周辺に保育所や商業施設を配置することで、駅が生活インフラとしての役割も担うように再構成されている。 - 地域への影響
駅の機能強化と空間整備により、周辺の回遊性や交通の利便性が向上し、まちづくりや地域経済への波及効果が期待されている。

相鉄線の海老名駅は、朝夕のラッシュ時に混雑が激しく、ホーム上や改札周辺での混乱が課題となっていました。そこで今回の改良工事では、駅の構造自体を根本から見直すことで、より快適かつ安全な駅利用を実現することを目的としています。従来の地上2階建て構造の駅舎を3階建てへ拡張し、2階部分には北口改札と中央改札を新設。1階には既存の南口改札を維持しつつ、中央改札の移設も計画されています。

また、乗降客の安全確保を目的に、全ホームに可動式ホームドア(ホーム柵)を設置予定。さらに、2階には保育施設や商業施設を配置し、地域住民の暮らしに密着した利便性の高い空間を創出します。南北を結ぶ連絡通路も新設され、駅構内での移動が格段にスムーズになります。このように、交通インフラとしてだけでなく、生活インフラとしての機能強化が進められています。


工事は2015年に本格着工し、当初は2020年3月の完成を目指していました。しかし、途中で基礎杭の施工不良が判明し、安全性を優先した再調査と工程見直しが行われ、スケジュールが数年単位で変更されました。これにより工事は段階的に進められることとなり、2023年3月には北口改札が先行して供用開始されました。


今後の予定としては、2025年上期に中央改札口(2階部分)の供用開始、併せて1階部分の中央改札を本設位置へと移設する工事が予定されています。さらに、2026年上期にはホームドアの使用開始、同年度末には連絡通路の全面開通が見込まれており、駅構内の回遊性と乗換利便性は大幅に改善される見通しです。
こうした進捗状況の変化に対応するため、工事期間中は一部改札口の仮設化や乗換ルートの変更が行われており、利用者には周知と誘導が随時行われています。駅利用者の安全確保と利便性維持を両立させながら、慎重かつ着実に整備が進められています。


海老名駅の改良工事は、単なる機能拡張にとどまらず、駅空間全体のブランド価値向上も目指しています。その柱となっているのが「デザインブランドアッププロジェクト」です。このプロジェクトでは、駅舎の外観に重厚感のある濃いグレーの外壁を採用し、駅利用者が「選びたくなる駅」と感じられるような空間演出が行われています。

内装には、鉄、レンガ、ガラスといった異素材を組み合わせることで、現代的でありながらも温かみのあるデザインを実現。設計と監修には、クリエイティブディレクターの水野学氏(グッドデザインカンパニー代表)と、空間プロデューサーの洪恒夫氏(丹青社)が携わり、相鉄沿線全体のブランドイメージ統一を図っています。
この取り組みによって、駅そのものが単なる通過点ではなく、地域の“顔”としての存在感を放つことが期待されます。将来的には、こうした空間演出が駅周辺の商業活性化にも波及する可能性を持っています。


この大規模改良プロジェクトは、「一般社団法人 海老名市地域公共交通協議会」が事業主体となり、相模鉄道、海老名市、国土交通省などが連携して進められています。事業は国の「鉄道駅総合改善事業(形成計画事業)」として位置付けられており、総事業費はおよそ50億円規模に上ります。
資金面では、国、地方自治体、鉄道事業者の三者で均等(各1/3)に負担する方式が採られており、官民一体となった持続可能なインフラ整備のモデルケースとなっています。こうした体制は、財源の分散によって負担を軽減しつつ、地域の声を反映した事業計画の策定・実施を可能にするメリットがあります。

また、駅施設の再整備だけでなく、駅前広場の整備や周辺交通との接続改善も並行して行われており、広域的な公共交通のハブ機能が強化される見通しです。最終的には、住民、通勤者、観光客など多様な利用者にとって「使いやすく魅力的な駅」となることが期待されています。
最終更新日:2025年6月25日