福島駅東口地区で進められている第一種市街地再開発事業において、2025年7月28日、福島市と再開発組合は「基本設計の概成」を発表しました。この再開発事業は、福島市が掲げる「風格ある県都を目指すまちづくり構想」のもと、公会堂や市民会館の再編と駅前の活性化を軸に進められてきたものです。
今回の設計概成により、駅前に整備されるフレキシブル・ホールや大屋根広場、市民センター機能などの具体像が明らかになり、市民や来訪者が集い、つながる多機能空間の実現に向けた大きな一歩となりました。規模は、敷地Aの「複合棟」の「民間エリア」が地上10階、地下1階、塔屋1階、高さ52.5m、延床面積16,900㎡、「公共エリア」が地上4階、塔屋2階、高さ29.5m、延床面積14,500㎡、「駐車場棟」が地上6階、高さ21.8m、延床面積17,500㎡、敷地Bの「住宅棟」が地上13階、高さ41.9m、延床面積9,700㎡となります。
今後は基本設計を踏まえて、さらなる詳細設計と積算が進められ、2029年度の施設の完成に向けた準備が本格化します。
福島駅東口地区第一種市街地再開発事業の概要
1. 再開発の背景と目的
福島駅東口再開発は、「風格ある県都を目指すまちづくり構想」に基づき、市民会館や公会堂の再編と駅前の活性化を目指すプロジェクト。施設の老朽化や市街地のにぎわい創出を背景に、公共・民間連携による新たな拠点形成が計画されている。
2. 基本設計の概成と方針
2025年7月、基本設計が概成。設計は公共エリアと民間エリアを分けつつも一体的な空間活用を図り、象徴性と柔軟性を持つ「C案」が採用された。コスト削減(VECD)も考慮しつつ、利便性と公共性を両立した内容となっている。
3. フレキシブル・ホールと市民利用空間
多目的に活用できる「フレキシブル・ホール」は平土間形式で、音楽イベントから展示会まで幅広く対応。日常利用を意識したフードホールやシェアオフィスも併設され、市民と来訪者が交わる場として機能する。
4. 回遊性とまちとの連携
駅前通りや大屋根広場と連携した空間設計により、イベント開催や日常利用における回遊性を高めている。市に移管された駅前通りとの一体活用により、エリア全体でのにぎわい創出が期待される。
5. 多層構造による「まちなかリビング」
施設内は居間・客間・こども部屋など生活になぞらえた構成で、誰もが居場所を持てる設計。「まちなかにある自分の部屋」としての役割を果たし、市民の交流や滞在を促進する。
6. 屋上空間「STREET PARK」の設置
屋上には小広場が道のようにつながる「STREET PARK」を整備。高低差や景観を活かした構成で、日常利用から小規模イベントまで対応し、都市に新たな憩いと風景を提供する。
7. ホワイエがつなぐ公共と民間
施設中央のホワイエは吹き抜け構造で、公共機能と民間機能を柔軟に連携。人と人、空間と空間をつなぐハブとして、展示・イベント・交流の舞台となる可変的な空間が創出される。

福島駅東口再開発の核となる目的は、「市有施設の戦略的再編」と「駅周辺の活性化」という2点に集約されます。2018年12月に福島市が策定した「風格ある県都を目指すまちづくり構想」では、市民会館や公会堂の機能を見直し、市民が誇れる交流・集客拠点の整備を打ち出しました。
2022年には、事業計画の見直しが進められ、「ハイブリッドホール案」が認可され、民間事業者との合意も成立しましたが、建設費の高騰やコロナ禍の影響により事業の再構築が求められる事態に直面しました。その後、市議会やタウンミーティングを通じて市民の声を取り入れ、2024年から2025年にかけて見直し方針を策定。施設の規模を縮小しつつも、より開かれた空間設計を目指し、基本設計が取りまとめられました。


今回策定された基本設計は、より柔軟性と開放性に富んだ設計が意識されています。特に、民間と公共のエリアを明確にしながらも、空間的なつながりを保つ工夫がされています。ホールは「平土間」のフレキシブル・ホールに変更され、利用目的やイベント規模に応じて自在に変化する空間が実現されます。また、大屋根広場や屋上広場など、憩いや交流の場となる空間も複数設けられており、日常的な市民の利用と非日常的なイベント開催が共存する設計です。
設計案はA~Cの3案が検討された結果、より象徴性と機能性を兼ね備えた「C案」が採用され、特徴的な外観や空間の連続性が評価されました。フロア構成や施設の面積、設備グレードなどはVECD(コスト削減)を考慮しながらも、市民にとって魅力ある拠点づくりが重視されています。

この施設では、「音楽に高揚する」「文化パフォーマンスに酔う」「スポーツで盛り上がる」など、多様な12のシーンコンセプトが想定されており、フレキシブル・ホールや広場の利用方法に幅をもたせています。例えば、コアなファンが集う音楽イベントや企業の展示会、新製品発表などに対応できるほか、日常的に人が集まるフードホールやシェアオフィスも整備される予定です。
また、「ふくしまの食にワイガヤする」「ふらっと立ち寄ってのんびりする」など、県民の日常生活に寄り添う用途も重視され、単なる観光拠点ではなく、まちの一部として継続的ににぎわいを生む場が目指されています。多様なシーンを想定することで、年間を通じて多様なイベントや活動が展開され、施設の利活用の幅が広がります。

フレキシブル・ホールや大屋根広場は、駅前通りや周辺広場との一体的な利用が可能とされており、まち全体の回遊性とにぎわいを高める工夫が施されています。特に、大屋根広場と駅前通りの接続は、イベントのスムーズな展開や人の流れの創出に効果が期待されます。2025年4月には駅前通りが県から市に移管されたことで、イベント実施の自由度も増し、雨天時には屋根下に避難しながら継続可能なイベント設計も可能となりました。
まちなか広場やさんかくストリートなどとの連携により、複数会場を使った大型イベントや市民プロジェクトの同時開催も視野に入れられています。これにより、福島駅周辺に新たな文化と経済の循環を生む起点となることが期待されます。


施設内には、居心地の良さと用途の多様性を兼ね備えた「まちなかリビング」が整備されます。1階は福島の文化やイベントを発信する“客間”として、来訪者を迎える空間となります。2階は“居間”として、自由に読書や会話、勉強などができる空間設計。3階には“こども部屋”のイメージで、ゲームや将棋、囲碁など多世代が交流できるスペースが用意されます。
このように、上下階の利用コンセプトを明確にしつつ、屋上広場へのアクセスも可能となっており、公共空間としての活用範囲が広がります。まちなかにある“自分の居場所”として、福島市民にとって身近なサードプレイスとなることを目指しています。

屋上には、小さな広場が道のようにつながる「STREET PARK」と呼ばれる連続的空間が整備されます。各広場は親子連れや個人がくつろぐのに適したサイズ感となっており、日常的な利用からミニイベントまで多用途に対応できる仕様です。高低差や視点の変化を活かしながら、駅前の風景を楽しめる設計も魅力です。
また、施設全体に広場空間が立体的に展開されており、それぞれが連携しながら一体感を形成。シンボリックな外観とともに、駅前の顔として印象的なランドスケープを形作ります。日常と非日常が交錯するこの屋上広場は、都市における新しい憩いのかたちを提案しています。


施設中央には、公共エリアと民間エリアをつなぐ「ホワイエ」が設置されます。この空間は吹抜け構造となっており、上下階の視線が交わることで、人と人とのつながりが自然に生まれるよう設計されています。ホワイエにはフレキシブル・ホールやフードホール、会議室、シェアオフィスなどが面しており、空間を仕切る壁や扉を開放すれば、広がりのある一体的な使い方が可能です。
ホワイエは単なる動線ではなく、人が立ち止まり、語らい、交流する場としての機能を担います。可変性を持った空間として、多様なイベントや展示、プレゼンテーションの舞台にも活用できるように設計されており、施設全体のハブとなる役割を果たします。
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最終更新日:2025年7月29日

