名古屋市は、都心部の回遊性を高める新しい都市交通システム「SRT(Smart Roadway Transit)」の第1弾として、「SRT 名駅-栄系統」を2026年(令和8年)2月13日に運行開始することを公表しました。SRTは、次世代型の連節バスを活用し、ICTやデザインの力で快適な移動を実現する新交通システムで、都心部の人の流れを創出し、名古屋駅と栄の2大拠点を一体的に結びつける役割を担います。運行事業者は名鉄バス株式会社で、名古屋市が整備・運行計画を担い、委託方式で運行されます。
ルートは名古屋駅から広小路通を東進し、柳橋、広小路本町、栄、広小路本町、納屋橋、名古屋駅桜通を一周する約5.6km。主要停留所は7か所で、SRT専用停留所は3か所に整備されます。導入される車両は、ヨーロッパを中心に高い評価を得ているドイツ・ダイムラーバス社製の「シターロG」。定員122名、全長18.1メートルの大型連節バスで、環境性能とデザイン性を兼ね備えています。SRTの運行開始により、名古屋都心の交通利便性と都市の魅力が一層高まることが期待されています。
→名古屋市 新たな路面公共交通システムSRTの導入に向けて Smart Roadway Transit
SRT(Smart Roadway Transit)の概要
1. 運行開始日と目的
名古屋市が推進する都心回遊性向上と賑わい創出を目的とした新都市交通「SRT(Smart Roadway Transit)」の導入。第1弾となる「名駅-栄系統」は、2026年(令和8年)2月13日の運行開始予定。
2. 運行事業者と体制
名古屋市を事業主体とし、名鉄バス株式会社が運行を受託する官民連携型の運行体制。交通インフラ整備とデザイン統一を通じた、まちづくり一体型の運営モデル。
3. 運行ルートと距離
名古屋駅(桜通口)から栄まで約5.6kmを結ぶ東西軸の主要ルート。広小路通を経由し、柳橋・納屋橋・広小路本町などを通過する都心横断系統。
4. 停留所と整備内容
全7か所の停留所による運行構成。「栄」「広小路本町」「納屋橋」の3か所をSRT専用停留所とし、歩道拡幅型“テラス型”デザインによる安全・快適な乗降空間の整備。
5. 使用車両と特徴
ドイツ・ダイムラーバス社製「シターロG(Citaro G)」の導入。全長18.1m・定員122名の大型連節バスによる、高いデザイン性・環境性能・静粛性を備えた次世代車両。
6. 運行日と運賃体系
金・土・日・月曜および祝日における週4日+祝日の定期運行体制。運賃は大人210円・小児100円、ICカード・タッチ決済・QR乗車などに対応する多様な決済方式。
7. 期待される効果と今後の展望
名駅と栄を結ぶ都心回遊性の向上と、商業・観光・文化拠点の連携強化による都市活性化効果。今後の他ルート拡大を視野に入れた、名古屋都心の新たな交通シンボルの創出。

SRTは、「Smart Roadway Transit」の略称で、単なるバス輸送の高度化ではなく、都市空間と調和した“移動そのものが体験となる交通システム”を目指しています。名古屋市が掲げる「都心の回遊性向上」と「まちの魅力の連続化」を具現化する施策の一環であり、歩行者空間整備や沿道再開発とも連携して導入されます。
デザインコンセプトは「都心風景の未来を先導」。先進的でありながらも名古屋のまちに自然に溶け込むデザインを採用し、車体カラーには“アーバンゴールド”を基調としています。この色は、都心の街路樹や建築物の光の反射を美しく映し出すトーンで、昼夜を問わず街並みに調和します。
また、SRTのシンボルマークは「つながり」をテーマに、一筆書きのラインで構成されており、名古屋都心の光と影、そして人と街の結びつきを象徴します。SRTは交通だけでなく、都市のイメージアップを担う「移動する都市ブランド」としての側面も持ち合わせています。


「名駅-栄系統」は、名古屋の都心を横断する約5.6kmのルートで、名古屋駅前(桜通口)を出発し、柳橋もしくは納屋橋、広小路本町を経由して栄に至ります。ルートは商業集積が進む広小路通沿いを主軸としており、沿線には老舗百貨店やオフィスビル、ホテル、観光施設などが立ち並びます。
停留所は計7か所で、このうち「栄」「名古屋駅」「名古屋駅桜通」の3か所はSRT専用デザインの停留所として整備されます。停留所空間には「テラス型」と呼ばれる広場的な構成を採用し、乗降スペースを歩道と一体化させることで安全性と快適性を両立しています。ベンチや植栽、サインなどもSRTデザインで統一され、停留所そのものが“まちの景観要素”として機能します。
また、照明・案内表示・点字ブロックの整備にも配慮し、バリアフリー化が進められています。今後は停留所周辺での店舗出店や滞留空間の整備など、民間との連携による賑わいづくりも期待されています。

SRTは、金曜・土曜・日曜・月曜および祝日の週4日+祝日に運行され、運行時間は午前9時から午後5時台まで。1日あたり12便を運行し、名駅から栄までの所要時間は約20分を予定しています。平日も今後の需要状況に応じて運行拡大が検討されます。
導入される「シターロG」は、静粛性と乗り心地に優れたディーゼルハイブリッド連節バスで、環境負荷の低減にも配慮。定員は122名(座席35席)で、低床構造のため乗降がスムーズです。また、トヨタ紡織の「MOOX-RIDE」技術を活用したデジタル空間を車内に導入し、窓面ディスプレイなどを通してルート上の店舗・文化施設情報や観光案内がリアルタイムに配信されます。交通機能だけでなく、“まちを感じ、まちを知る移動空間”としての新しい体験価値を提供するのが特徴です。


SRTの運賃は大人210円、小児100円で、名鉄バスの一般系統と同水準。支払い方法は多様で、現金・交通系ICカード(マナカ・TOICAなど)・クレジットカードタッチ決済・QRコード乗車券(スマホアプリ「CentX」対応)に対応しています。タッチ決済では「1日上限運賃制度」が導入され、同一日内の複数回乗車でも大人500円・小児250円を上限として自動計算されます。これにより、観光や買い物での回遊利用がしやすくなります。
また、SRT限定の1日乗車券(大人500円・小児250円)も販売予定で、堀川クルーズや鉄道とのセット利用券も企画されています。障害者手帳割引・敬老パス・福祉特別乗車券にも対応し、幅広い世代に開かれた都市交通を目指しています。乗降は「全扉乗降方式」で、停車時間の短縮と混雑緩和を実現。ICカードやタッチ決済は乗車時の“ワンタップ”で完結する設計となっており、利便性が飛躍的に向上します。


SRT 名駅-栄系統の導入は、名古屋都心の東西軸の回遊性を飛躍的に高める施策として注目されています。これまで鉄道・地下鉄では結びにくかった地上レベルの移動を快適にし、名駅・伏見・栄という三大拠点の一体化を促します。沿線の商業施設やオフィス街へのアクセスが改善されることで、人の流れが広がり、地上空間の活性化につながると期待されています。
また、SRTは単独の交通システムとしてではなく、「都心のまちづくりと一体的に進める都市プロジェクト」として位置づけられています。今後、久屋大通方面や名古屋港方面への延伸、または他ルートの整備も検討されており、持続可能でスマートな都心交通の核として発展が見込まれます。
企業版ふるさと納税による民間支援も進んでおり、J.フロント都市開発株式会社が栄地区のまちづくりを支援する形で300万円を寄附。行政・民間・市民が連携し、SRTを名古屋都心の新しい“都市アイコン”へと育てていく動きが始まっています。SRTの走る景観は、名古屋の未来を象徴する新しい都市風景として定着していくことでしょう。
最終更新日:2025年10月24日

