超高層ビルは、建築の世界において象徴的な存在であり、都市景観の一部としてだけでなく、技術革新の象徴としても注目されています。中でも、ハイパービルディング(Hyper-building)は、従来の超高層ビルの枠を超え、1,000メートル以上の高さを誇る建築物を指します。
これらの建物は、地上の空間を最大限に活用し、都市機能を垂直方向に集約する新たな都市モデルを示しています。しかし、2025年現在、世界には高さ1,000メートルを超える建物は存在しておらず、最も高い建物であるブルジュ・ハリーファでも828メートルです。それでも、今後計画されているいくつかのプロジェクトが、この限界を超えようとしています。
例えば、アラブ首長国連邦ドバイの「ドバイ・シティ・タワー」は、2,400メートルに達し、400階の規模を誇る予定です。これにより、都市機能が垂直に集約され、効率的な都市空間が創出されることを目指しています。デザインにおいては、環境への配慮が重視され、再生可能エネルギーの活用や、垂直型新幹線による移動効率の最適化が図られています。
また、サウジアラビアの「ジッダ・タワー」も、1,000メートルを超える超高層ビルとして注目され、実際に建設中のこのビルは、世界最高の高さを誇ることになるでしょう。このように、ハイパービルディングの建設は、建築技術や都市計画において新たな挑戦を提示し、未来都市の姿を形作るための重要な一歩となると期待されています。
【アラブ首長国連邦】ドバイ・シティ・タワー

ドバイ・シティ・タワー、別名「バーティカル・シティ(Vertical City)」は、アラブ首長国連邦・ドバイで構想されている超高層ビルで、完成時には高さ2,400mに達する予定です。この高さは、現在世界一の高さを誇るブルジュ・ハリーファ(828m)の約3倍にあたり、400階の利用可能なフロアを持つ驚異的な規模の建築物です。2008年に発表されたこのプロジェクトは、ジュメイラ・ガーデン・シティ計画の一部として提案され、地上の都市機能を垂直に展開する新しい概念を体現しています。
タワーのデザインは、6棟のビルが中央のコアを中心に螺旋状に結合され、100階ごとに「スカイプラザ」と呼ばれる共用エリアが設けられています。このスカイプラザは、都市の中心地のような役割を果たし、ショッピングモール、レジャースペース、公園など、さまざまな用途に対応しています。また、各スカイプラザ間は垂直型の新幹線で接続され、効率的かつ高速な移動を実現。これにより、タワー内の都市機能を小規模で管理しやすい単位に分割しています。

タワーは環境に配慮した設計が特徴で、電力は風力や太陽光、熱エネルギーなどの再生可能エネルギーでまかなわれる予定です。建物内には海水淡水化プラントや廃棄物処理システムが設置され、各スカイプラザは自立型のエコシステムを形成します。さらに、外装には太陽電池が組み込まれ、尖塔には風力タービンが配置されるなど、エネルギー効率を追求した構造となっています。
タワーの基壇部には、商業施設やコンベンションセンター、駐車場が設けられています。地下の駐車場にはロボットパーキングシステムを採用し、最大限の効率性を追求しています。建物全体の形状は、風や地震などの自然の力に耐えられるよう設計されており、6つの独立したビルが時計回りと反時計回りに回転しながら中央コアに結合される構造が採用されています。

タワーの利用可能な床面積の65%は最初の100階に集中しており、オフィススペース、ホテル、住宅がバランスよく配置されています。地上に近い階層はオフィススペース、上層は住宅スペースと用途が垂直方向で分けられており、効率的なエレベーター配置によって住民や労働者の移動が最適化されています。
ドバイ・シティ・タワーは、建築技術と都市計画の限界を押し広げ、陸と海にまたがる未来都市の象徴として設計されています。垂直都市という新しい概念を具現化し、ドバイの進化と革新の象徴となるこのタワーは、世界中の注目を集める壮大なプロジェクトです。
【サウジアラビア】ジッダ・タワー

ジッダ・タワーは、サウジアラビアのジッダの再開発地区「ジッダ・エコノミック・シティ」の中央部で建設中の地上167階(165階)、地下2階、高さ1,008メートル、延床面積243,866㎡の世界一高い超高層ビルです。世界初の高さ1,000メートルを超える超高層ビルとなります。このプロジェクトは「ブルジュ・ジッダ」または「キングダム・タワー」とも呼ばれ、ジッダ・エコノミック・シティの中心的存在として設計されています。当初は1,600メートルの高さで計画されていましたが、土壌調査の結果などにより現在の高さに修正されました。完成すればドバイのブルジュ・ハリファを超える、世界一高い建築物となります。
設計は、ブルジュ・ハリファのデザインを手がけたアメリカの建築家エイドリアン・スミスが担当。タワーにはフォーシーズンズホテル、高級住宅、オフィススペース、さらには世界最高所の展望台が含まれる予定です。建物の構造設計はアメリカのソーントン・トマセッティ社が行い、建設はサウジ・ビンラディン・グループが担当しています。総工費は約948億円とされており、このプロジェクトの背後には中東屈指の資産家であるアル=ワリード・ビン・タラール王子が率いるキングダム・ホールディング・カンパニーが控えています。

建設計画は2013年に始まりましたが、世界金融危機やCOVID-19パンデミック、労働問題などの影響で何度も工事が中断されました。2019年に工事が一時停止した際、建物は約3分の1の高さまで完成していました。2023年9月に工事が再開され、2029年の完成を目指しています。ただし、これまでの遅延や不確定要素を考えると、最終的な完成時期は依然として不透明です。

ジッダ・タワーの建設地であるジッダ・エコノミック・シティは、紅海に面した約5.2平方キロメートルの開発地区で、都市機能やビジネス拠点、居住エリアを統合した近未来的な都市計画の一環です。このプロジェクトは、サウジアラビアの経済多角化政策「ビジョン2030」の一部として、観光や経済の活性化を目指しています。ジッダ・タワーの完成は、単に世界一の高さを誇る建築物の実現にとどまらず、中東地域の発展の象徴として位置づけられています。
→世界一高い高さ1,008mの超高層ビル「ジッダタワー(キングダムタワー)」の建設が再開!!
【クウェート】ブルジュ・ムバラク・アル=カビール

ブルジュ・ムバーラク・アル=カビールは、クウェートのマディナ・アル=ハリール(通称「シルクシティ」)に建設が計画されている、地上234階、高さ1,001メートルの超高層ビルです。この建築物は、クウェートの経済多様化を目的とした「クウェート・ビジョン2035」の一環として、象徴的な存在となることを目指しています。その高さ1,001メートルは、イスラム世界の説話集「千夜一夜物語」にちなんだものです。
このタワーは、スペインの著名な建築家サンティアゴ・カラトラバが設計し、3つの塔が絡み合う斬新なデザインが特徴です。この構造により、時速241キロメートルの強風にも耐えられる設計となっています。タワーには、オフィス、アパートメント、ホテル、展望台、さらには多くの小売店やレストランが含まれる予定で、約7,000人を収容できる大規模施設となります。また、3階建てのエレベーターが設置される予定で、近未来的な利便性も備えています。
ブルジュ・ムバーラク・アル=カビールが建設されるシルクシティは、総面積250平方キロメートルに及ぶ都市開発プロジェクトです。この地区には、住宅や商業施設、教育・文化施設、大規模なセントラルパークなどが整備される計画で、約70万人が居住可能な未来都市として構想されています。このプロジェクトは約43万人の雇用を創出するとともに、クウェートへの外国投資を促進し、石油依存からの脱却を目指しています。
当初、ブルジュ・ムバーラク・アル=カビールは2016年の竣工が予定されていましたが、計画の遅延が続き、2023年には新たな設計案が発表されました。総工費は約12億ドル、完成までに25年を要するとされており、建設が順調に進めば2035年に開業する見通しです。完成すれば、このタワーはクウェートの新しいランドマークとして、国内外から多くの注目を集めることでしょう。
→高さ1,001mの超高層ビル「ブルジュ・ムバラク・アル=カビール」も建設されるクウェートの大規模都市開発「マディナ・アル・ヘアール」!!
【エジプト】オブリスコ・キャピタル

オブリスコ・キャピタルは、エジプトの新行政首都で建設が計画されている超高層ビルで、高さ1,000メートル(1キロメートル)を目指す壮大なプロジェクトです。このビルは、エジプト政府が進める国家戦略「エジプト・ビジョン2030」の一環として2018年に発表され、ブルジュ・ハリファを超える世界最高層ビルとなることを目指しています。
設計は、エジプトの建築会社IDIAが手掛け、古代エジプトのオベリスクをモチーフにしたデザインが特徴です。さらに、ナイル川を象徴する水路がビル内に取り入れられるなど、エジプトの伝統と現代的な技術が融合した意匠となっています。建物は地上210階建てで、住宅やホテル、商業施設、レストランなどを含む複合用途施設として構想され、エジプトの新行政首都の中心業務地区にランドマークとしてそびえる予定です。
建築デザインはファラオ様式とアール・デコを融合させた独特の美しさを持ち、歴史と現代建築の調和を象徴しています。特に、太陽の軌道に合わせて回転するルーバーを備えており、エネルギー効率を最適化しつつ熱放射を抑制する設計が採用されています。この技術により、環境に配慮した建築としてLEED認証の取得も見込まれています。

ファサードには、古代エジプト文化で重要な象徴とされるエジプト睡蓮の意匠が取り入れられています。このデザインは、伝統への敬意を表すと同時に、現代的な建築の革新性を強調するものです。また、緑豊かなテラスや共有スペースも計画され、環境の持続可能性やコミュニティの交流を促進する設計が施されています。
オブリスコ・キャピタルは、新行政首都の象徴的な存在となるだけでなく、エジプトの未来を示すランドマークとして国際的な注目を集めることが期待されています。
【イギリス】マイルハイエコタワー

マイルハイエコタワーは、ロンドン東部に提案された高さ約1,500メートル(1マイル)、500階建ての超高層ビルです。この計画は、英国の建築会社ポピュラーアーキテクチャーによって2008年に発表され、100,000人を収容できる環境に優しい未来型都市を目指していました。ビル内には、住宅、学校、病院、商店、パブなどの生活に必要な施設が全て揃い、効率的で自立したコミュニティを形成することを目的としていました。
タワーの最大の特徴は、20階ごとに配置された広大な内部空間で、公共広場やアイススケートリンク、植物園、スイミングプールなど、多様な活動を行える場として設計されていました。また、建物全体に庭園や緑地が配置され、持続可能性とエコロジーを重視したデザインが採用されています。垂直都市主義という概念を具現化するこの構想は、土地の有効活用と環境負荷の軽減を両立させるものでした。
提案者は、タワーがロンドンの限られた土地資源を最大限に活用しつつ、新たな都市層を形成するビジョンを提示しました。しかし、この計画は「非現実的」とも評され、実現には至らなかったものの、都市建築やエコデザインの可能性を考える上で重要な議論を引き起こしました。マイルハイエコタワーは、未来の都市像を想像させる象徴的なプロジェクトとして注目されています。
【アメリカ合衆国】アルコニックタワー


アルコニックタワーは、未来的な都市景観を描く構想の一環として設計された、サンフランシスコに建設予定の高さ4,800メートル(約3マイル)の超高層ビルです。1962年のSFアニメ「宇宙家族ジェットソン」から着想を得ており、その100年後の2062年に完成を目指しています。このタワーは、先進的な建築技術やスマートマテリアルを駆使して自然に触発された有機的な形状を実現。太陽光や水を活用した自立型エネルギー供給、スモッグ浄化機能を備え、持続可能な都市生活を支えるビジョンを具現化しています。さらに、電動窓がバルコニーに変化するなどの革新的な機能も特徴です。アルコニックタワーは、次世代の都市開発を象徴する夢の建築物として注目されています。
【サウジアラビア】ライズタワー

ライズタワーは、サウジアラビアのリヤドで計画されている世界一高い超高層ビル建設プロジェクトです。その高さは2,000メートルにも及び、ドバイのブルジュ・ハリファ(828m)を大きく上回ることが予定されています。このプロジェクトは、サウジアラビアの公共投資基金によって提案され、リヤド北部の北極プロジェクトエリアに建設される予定です。北極プロジェクトは、306平方キロメートルに広がる「未来の都市」として計画されており、持続可能性や高度な交通システムが取り入れられる構想です。ライズタワーはその中核を成す存在であり、完成すればリヤドの新たなランドマークとなるだけでなく、中東地域の革新と発展の象徴となると期待されています。
【日本】スカイマイルタワー

スカイマイルタワーは、日本の東京湾の埋め立て地に建設することを想定して提案された超高層ビルで、高さ1,700メートルを誇ります。このタワーは、都市開発のイニシアチブ「Next Tokyo 2045」の一環として提案され、将来的には東京湾周辺に新たなウォーターフロント都市を形成する計画です。設計にはコーン・ペダーセン・フォックス(KPF)とレスリー・E・ロバートソン・アソシエイツ(LERA)が関与し、スカイマイルタワーを中心に、約55,000人が住むことができる都市を構築することを目指しています。

このプロジェクトの目的は、気候変動、海面上昇、地震、台風といった自然災害への対策として、より強靭な都市を作り上げることです。スカイマイルタワーは、その高さから来るエンジニアリング課題を克服しつつ、住民の生活を支えるためのシステムを提供することになります。特に、タワー内の水供給や住民輸送に関しては、最先端の技術を駆使して解決策を提供する予定です。水供給はタワーのファサードに設けられた収集・貯蔵システムで行われ、重力を利用して各階に配分されます。また、55,000人の住民を効率的に運ぶため、ティッセンクルップのマルチロープフリーエレベーターが導入され、垂直および水平に移動可能です。

「Next Tokyo」は、東京湾の低標高地域を避け、より高い標高で新たな都市を作り上げることを目指しています。新たに開発されるウォーターフロントエリアは、居住地だけでなく、都市農業区画や淡水貯水池、公共のビーチハーバーなど、持続可能なリソース共有も考慮されています。さらに、湾内で塩水を利用して藻類を育成し、再生可能なクリーンエネルギー源として活用する予定です。
このプロジェクトは、人口増加と都市化が進む中で、沿岸部に位置する都市の脆弱性を解消するための革新的な解決策を提供するものとして注目されています。なお、スカイマイルタワーが実際に建設される可能性は限りなく低いですが、「Next Tokyo」は、環境変化に対して強靭な都市を築くことを目指し、都市空間が未来の都市開発のモデルとなる可能性を秘めています。
【中国】エクトピア

エクトピアは、中国上海に計画されている超高層ビルで、その高さは1,614メートルに達し、全300階の構造を持つ予定です。このビルは、単なる高層ビルに留まらず、自己完結型コミュニティとして設計されており、住民がビル内でほぼすべての生活必需品を賄うことができるようになっています。エクトピアは、都市の垂直都市化を目指す先進的なコンセプトビルとして、未来的な都市生活の新たな形を提示しています。
このプロジェクトは、巨大な規模と高層ビルならではの機能性を兼ね備えたデザインを特徴とし、居住スペースや商業施設、レクリエーション施設、オフィスエリアなどが一体化しています。300階建てのビル内には、住民が必要とするあらゆる施設が集約されており、外部の都市への依存を減らし、都市生活の新しい形を提案します。エクトピアの建設が完了すれば、上海は世界でも最も高度な超高層ビルを持つ都市の一つとなり、その規模と先進性で世界中の注目を集めることでしょう。
【アラブ首長国連邦】ジッグラトピラミッド


ジッグラトピラミッドは、2008年にドバイで計画された高さ1,200メートルの未来的な超高層ビルで、100万人を収容できる自給自足型コミュニティを目指しています。建設は2021年に開始され、2028年に完成する予定とされていました。この巨大なピラミッド型の建物は、カーボンニュートラルで、完全に太陽光や風力などの再生可能エネルギーを利用して動作します。ジッグラトの全体の広さは2.3平方キロメートルに及び、300階建てのフロアには住宅、商業、レクリエーションスペースが入ります。
ジッグラトは、エネルギー資源を効率的に活用し、蒸気動力や風力タービン技術を使用して自給自足する設計が特徴です。また、建物内での移動には公共交通機関が導入され、車を必要としない移動システムが提供される予定です。さらに、顔認識技術がセキュリティの一環として組み込まれ、住民の安全も考慮されています。
このプロジェクトは、ドバイの都市計画家グループ「Timelinks」によって設計され、環境に配慮した持続可能な都市モデルとして注目を集めています。ジッグラトは、地球環境に優しく、また効率的なインフラを備えた未来の都市として、世界の都市開発の新しい基準を示すことを目指しています。
【日本】東京バベルタワー

東京バベルタワーは、1980年代から1990年代初頭にかけて、早稲田大学理工学部建築学科尾島俊雄研究室が提案した超高層ビルの構想で、東京におけるバブル期のハイパービルディング計画の一環として策定されました。高さ1万メートルという壮大なスケールで、東京の中心部を中心に広がる山手線内の全てを敷地として、最大3,000万人の人口を収容することが想定されていました。この構想は、バベルの塔を模した名称の通り、天まで届くような高さを目指しており、都市の発展を8世代に分けて段階的に進め、最終的に山手線内に集約することを目指していました。
この超高層ビルは、環境に優しい設計が特徴で、太陽エネルギーや風力などの自然エネルギーを活用し、エネルギー効率の良い自給自足型の都市として機能することを目指しました。また、ビルの使用目的は多岐にわたり、最上部は宇宙開発センターや太陽エネルギーコレクター、次の階層には工業・研究施設、商業施設やオフィス、住居といった様々な施設が配置される予定でした。
その一方で、この計画には多くの現実的な問題もありました。例えば、建設費が3,000兆円という天文学的な額に上り、当時の日本の国家予算を大きく上回る規模であったこと、さらに広大な敷地を確保するためには既存の都市構造を完全に解体しなければならず、膨大な時間と費用がかかることが懸念されました。また、地震や災害に対する耐性が求められ、航空機の衝突リスクも考慮しなければならないなど、技術的・安全性の問題も多く指摘されました。
この計画は、バブル経済の崩壊に伴い実現には至りませんでしたが、後のハイパービルディング研究や都市の縦型発展に対するビジョンに大きな影響を与えました。東京バベルタワーは、未来の都市像として、人々の生活や環境問題に対する新しい視点を提供したものの、現実的な実現可能性については多くの課題を抱えていたことがわかります。
最終更新日:2025年1月26日