ニューヨーク市中心部に位置するペンシルベニア駅(Penn Station)は、1日あたり60万人以上が利用する西半球で最も利用者数の多いターミナル駅です。現在、この老朽化した駅と周辺地域の大規模な再開発計画が進行中であり、総工費は約70億ドル(約1兆100億円)にのぼります。プロジェクトを率いるのは「トレイン・ダディ(鉄道パパ)」の愛称で親しまれる元ニューヨーク市交通局長アンディ・バイフォード氏。今回の再開発では、駅の全面的な近代化と共に、公的空間や住宅、交通インフラの再整備が図られ、「ニューヨーカーのための駅」として生まれ変わることを目指しています。
ニューヨーク州 新しいペンシルベニア駅
→ブルームバーグ 「鉄道パパ」がプロジェクトを指揮、NY市ペンシルベニア駅再開発
ペンシルベニア駅再開発の概要
1. 再開発を率いるのは「鉄道パパ」アンディ・バイフォード氏
元ニューヨーク市交通局長で「トレイン・ダディ(鉄道パパ)」の異名を持つアンディ・バイフォード氏が、アムトラックの特別顧問としてペンシルベニア駅の改修プロジェクトを指揮する。彼はロンドンやトロントでも都市交通改革を牽引した実績を持ち、今回のプロジェクトでもコスト削減と予定通りの完成を目指す。
2. 駅の全面改修と近代化を中核に据えた再開発計画
再開発では、老朽化した駅を全面的に改修し、日光が差し込むシングルレベルの近代的な列車ホールを整備する。既存の駅構内を拡張し、動線を合理化、快適で安全性の高い空間に刷新する。
3. 「利用者第一」の駅と周辺エリアの再生を目指す
ホークル州知事の提案により、通勤者に焦点を当てた新たな駅と街づくりが進められる。地下鉄やLIRR(ロングアイランド鉄道)利用者を中心に設計され、歩行者空間や公共サービス施設も充実させる構想となっている。
4. 歴史と未来をつなぐ象徴的な再建プロジェクト
1910年に建設され、1963年に解体された旧駅の歴史を踏まえつつ、現代にふさわしい鉄道ハブを再構築する。Moynihan Train Hallの整備を皮切りに、駅とその周辺一帯の再生が段階的に進められている。
5. 新駅は地域の再生と経済成長の原動力に
新駅整備と並行して、約8エーカーの公共空間、住宅・商業施設の開発が進む。1,800戸の住宅を整備し、そのうち540戸は恒久的な低所得層向け住宅とする予定。再開発により5万人超の建設に関わる雇用創出も見込まれている。
6. 公共交通と歩行者中心の都市設計
駅周辺では地下通路や歩道の拡張、バリアフリー化、自転車レーンの整備などが進められる。既存の駅出入口は12カ所から20カ所に拡大し、混雑の緩和と利便性の向上を図る。
7. 官民連携による持続可能な資金調達と都市政策
再開発に必要な資金は、民間開発による収益を活用する形で調達され、税負担や運賃値上げを抑える工夫がされている。Empire State Development(ニューヨーク州都市開発公社)や地域住民との協議を重ね、公共性を重視した施策が展開される。

ペンシルベニア駅再開発プロジェクトを率いるのは、鉄道界のカリスマとも言えるアンディ・バイフォード氏。かつてトロントやロンドンで都市交通の改革を進め、2018年から2020年までニューヨーク市交通局長を務めた人物です。「トレイン・ダディ」として知られる彼は、交通網の復旧と近代化で高い評価を受け、2023年からはアムトラックの高速鉄道開発を指導してきました。2025年5月、米運輸省によりペン駅再開発の特別顧問に任命され、コスト削減と計画通りの完了を目指して再開発を牽引します。


新たなペンシルベニア駅は、「通勤者ファースト」の理念に基づき、利用者の利便性と快適性を最優先に設計されます。現在の多層構造で狭く混雑した構内は、自然光が差し込むワンフロア構造のモダンな駅舎へと生まれ変わる予定です。メインコンコースは現在の約123,000平方フィートから約250,000平方フィートへと倍増し、駅全体の視認性や動線が大幅に改善されます。また、新たに18本のエスカレーター・階段、11基のエレベーターが追加され、アクセス性が格段に向上します。

駅舎の再建にとどまらず、周辺地域の再整備も本プロジェクトの大きな柱です。開発密度を見直して、約8エーカー(32,000平方メートル)の公共空間を新設。ロックフェラー・プラザに匹敵する3万平方フィートの広場や自転車専用レーンの整備、歩行者優先道路の導入などにより、人々が安心して集える開かれた街並みが形成されます。さらに、建物正面の40%を商業・公共施設に割り当て、にぎわいと機能が共存する都市空間の創出が目指されています。

交通インフラの強化も目玉のひとつです。新駅では、地下通路の延伸により34丁目ハラルド・スクエア駅(B、F、M、N、R、W線)からの円滑な乗り換えが実現。ペン駅の出入口は現行の12カ所から20カ所へ拡充され、開発される各建物から直接駅へアクセス可能な構造となります。さらに、アムトラックの機能を移転したモイニハン・トレインホールと連携することで、利用者の動線は飛躍的に改善される見通しです。


再開発計画では、経済的弱者への配慮も重視されています。最大1,800戸の都市型集合住宅が建設予定で、そのうち540戸は恒久的な低所得者向け住宅とされます。また、地域のニーズに応じたコミュニティ施設の設置が義務づけられ、特にホームレス支援を重視。マディソン・スクエア・ガーデンの荷下ろし設備を地下に移設し、路上の混雑と騒音も軽減されます。

プロジェクトの第一段階は、既に完成したモイニハン・トレインホールにより始動しています。今後、4〜5年かけてペン駅の全面再建が実施され、最大40%のプラットフォーム拡張が予定されています。再開発は、周辺地域の経済を活性化し、約5万件の雇用を創出。税金や運賃への依存を抑えるため、民間投資を活用した持続可能な財源構造が構築される点も特徴です。地域住民や交通利用者、事業者を巻き込んだ参加型のプロセスを経て、「ニューヨークの玄関口」が再び世界に誇れる存在として蘇る日が近づいています。
最終更新日:2025年6月1日