横浜市旭区に位置する相鉄本線「鶴ヶ峰」駅北口周辺で、市街地再開発事業に向けた動きが本格化しています。2024年3月に設立された「鶴ヶ峰駅北口地区市街地再開発準備組合」が、再開発事業の実現に向け、民間の事業協力者(デベロッパーやゼネコン等)の募集を開始しました。この募集は、まちづくりの具体的な計画策定を加速させるとともに、長年にわたり検討されてきた地域再生の取り組みが次のステップに進む大きな契機となります。
本再開発は、周辺インフラや新駅施設の整備、地域住民と地権者の共同利益の実現を目指す大規模プロジェクトであり、相模鉄道本線の連続立体交差事業とも連携しながら、地域の未来像を描いていくものです。
(仮称)鶴ヶ峰駅北口地区第一種市街地再開発事業の概要
1. 鶴ヶ峰駅北口再開発が新たな段階へ
横浜市旭区の鶴ヶ峰駅北口で、市街地再開発準備組合が2024年3月に設立され、同年5月より事業協力者の募集を開始。長年の検討を経て、再開発が本格化する重要な転機を迎えた。
2. 事業協力者募集の目的と内容
駅周辺の再整備に向けて、施設計画や資金計画を担う民間事業者を選定。地下駅化や新駅舎の建設、駅前広場の再構築など、多様な課題に対して柔軟な提案が期待されている。
3. 地区の現状と課題
行政機関が集中する一方で、老朽化や踏切による分断、交通渋滞、未利用地の存在など、多くの都市課題が顕在化。まちの活力低下も懸念され、再生が急務となっている。
4. これまでの経緯と準備組合設立までの歩み
2003年のまちづくり協議会設立から始まり、複数の検討組織を経て、2019年にはまちづくり構想が策定。2024年に再開発準備組合が設立され、事業化への体制が整った。
5. まちづくり構想の将来像
「文化や自然に包まれ、人が集い続けるまち」を将来像に掲げ、駅前の土地の高度利用、交通の安全性向上、緑や水辺の活用など、住みやすく魅力的な都市空間の創出を目指す。
6. 地区のゾーニングと整備方針
駅前拠点ゾーン、沿道サービスゾーン、周辺環境ゾーンの3エリアに分け、それぞれの特性に応じた土地利用と機能配置で、利便性と快適性を兼ね備えた都市基盤の再構築を図る。
7. 今後の推進体制と展望
地域・民間・行政が三位一体となってまちづくりを推進。今後は連続立体交差事業の進行と連動しながら、段階的な再開発を進め、持続可能で人中心の都市づくりを実現していく。

鶴ヶ峰駅北口地区の再開発を推進するため、再開発準備組合は、再開発に関する専門的知見と実績を有する民間事業者の参画を求めています。今回の募集は、施設整備計画、資金計画、権利変換など、再開発事業の中核を担う検討を加速するための重要なステップです。
このプロジェクトでは、相模鉄道本線の地下化に伴う新駅舎の整備、道路などのインフラの更新といった複合的な課題への対応が求められています。特に駅前空間の再構築においては、将来的な人や車の流れの変化、周辺都市計画との整合性などを考慮した上で、柔軟かつ実行力のある提案が期待されます。
地域の将来を見据え、準備組合のビジョンを理解し、具現化できるパートナーシップが不可欠です。募集期間は2025年5月15日から6月15日まで。選定された事業者は、行政や関係機関と連携しながら、具体的な再開発計画の策定と実行を担っていくことになります。


鶴ヶ峰駅周辺は、旭区役所や福祉保健センター、消防署などの公共機関が集積し、行政の中心としての機能を果たしてきました。また、交通の結節点、商業の拠点としても発展を遂げており、地域の重要な拠点として位置づけられています。
しかし一方で、老朽化した都市インフラや慢性的な交通渋滞、まちの南北を分断する鉄道による移動の制約など、様々な課題が残されています。特に「開かずの踏切」の存在は、交通の滞留だけでなく、緊急車両の通行にも支障をきたす深刻な問題です。
また、少子高齢化の影響により、周辺の活力が低下しており、駅前でありながら未利用地が目立つなど、土地利用が不十分な現状も見逃せません。こうした状況を踏まえ、持続可能で魅力ある都市空間の実現が強く求められています。

鶴ヶ峰駅北口周辺のまちづくりは、実に20年以上にわたって検討が続けられてきました。最初の動きは2003年の「鶴ヶ峰駅北口周辺まちづくり連絡協議会」の設立にさかのぼります。その後、地権者による再開発研究会(2010年)や再開発協議会(2014年)の設立を経て、地域の思いや意見を取り入れながら計画が進化してきました。
2019年には「まちづくり構想」が策定され、将来像の共有と方向性が明文化されました。これに先立ち、相模鉄道本線の連続立体交差事業についても、横浜市は2018年に地下方式の採用を決定、国からは翌年に着工準備の採択を受け、県からは2022年に都市計画事業として認可されています。
そして2024年3月、ついに「再開発準備組合」が正式に設立され、今後の事業化に向けた実質的な検討段階へと移行しました。地域・行政・民間の三者協働による体制のもと、鶴ヶ峰駅周辺の再生がいよいよ現実味を帯びています。


まちづくり構想では、「文化や水・緑を感じる豊かな環境に、人が集い、快適に暮らし続けられるまち」という将来像が掲げられており、単なるハード面の整備にとどまらず、暮らしの質を高める都市づくりを目指しています。中でも特に重視されているのは、駅前の土地を有効に活用し、商業、住宅、公共施設が複合する多機能な拠点空間として整備すること、交通機能の改善と歩行者にとって安全で快適な空間の確保、そして水辺や緑地、公園などの自然環境を活かした、文化や自然と共生するまちづくりです。
また、地区は大きく三つのゾーンに分けられており、それぞれに応じた整備方針が示されています。駅前拠点ゾーンでは高い利便性とにぎわいの両立を図り、沿道サービスゾーンでは通りに面した快適で魅力的な商業空間の形成を目指します。さらに、周辺環境ゾーンにおいては、緑と水に包まれた落ち着きのある住環境の整備が進められます。

まちづくりの推進においては、地域住民、民間事業者、行政の三者がそれぞれの役割を担い、連携しながら取り組むことが重要です。地域は日々の生活や地域特性を発信する担い手であり、事業者は計画実現の専門家としての力を発揮し、行政は調整と支援、基盤整備を担当します。

今後、連続立体交差事業の進捗に合わせて再開発の具体化が進められ、段階的な事業実施が見込まれます。募集された事業協力者は、その中核を担い、再開発のリーダーシップを発揮することが期待されています。
地域が長年描いてきた「人が集い、安心して暮らし続けられるまち」の実現へ向けて、鶴ヶ峰駅北口の再開発は今、決定的な一歩を踏み出そうとしています。
最終更新日:2025年5月22日