府中市は老朽化が進む現・郷土の森総合体育館の移転・再整備を進めるため、新たに「新総合体育館基本構想」を策定しています。新体育館は、府中基地跡地留保地への移転を軸に、多様化する市民ニーズや防災機能の強化、スポーツタウン府中の理念に基づくまちづくりとの連携を図りながら、スポーツの観戦・参加環境の充実と地域活性化を目指します。令和6年度から検討協議会が設置され、令和7年度までに基本構想を完成させる計画となっており、令和7年7月から広く意見や要望を集める「オープンハウス」が開催されます。
府中市 新総合体育館基本構想の概要
1. 移転の背景と現状
現・郷土の森総合体育館は老朽化が進み、市は府中基地跡地留保地への移転・再整備を計画。令和6年度から基本構想の検討が始まり、令和7年度までに策定予定。
2. 既存体育館の機能と利用状況
現施設は多様なスポーツ機能を持ち、利用者も多いが老朽化が深刻。特に武道場やトレーニング室の需要が高い。
3. 文化・スポーツ施設配置計画との連携
隣接の生涯学習センターの体育機能を統合し、学習機能は中心市街地へ移設。宿泊機能は廃止予定で、機能分散と効率化を目指す。
4. 府中基地跡地留保地の特徴と環境配慮
移転先の基地跡地は広大で、希少動植物の生息が確認されているため、生態系保護と施設整備の両立が課題。
5. 基本構想の検討体制と目的
令和6年度に設置された検討協議会が主導。スポーツ振興や防災機能強化、トップチームの支援を踏まえた施設設計を目指す。
6. 市民ニーズと防災機能の強化
スポーツ観戦環境の充実や市民が気軽に参加できる施設づくりが求められている。浸水対策など防災機能も重要視。
7. 今後のスケジュールと事業化方針
令和7年までに基本構想をまとめ、供用開始は令和15年度以降。PFI導入も検討され、老朽施設は新体育館完成後に解体予定。

現存する府中市立総合体育館は、1971年(昭和46年)に第一体育室棟が完成し、50年以上が経過して老朽化が著しく進んでいます。施設の耐用年数が近づいていることから、市は令和2年に策定した「府中基地跡地留保地利用計画」において、この総合体育館を同地に移転する方向性を明確にしました。翌令和3年度の「第7次府中市総合計画」でも、この移転事業を重点プロジェクトの一つに位置付けています。さらに、「第2次府中市スポーツ推進計画」においても移転・建て替えを重点項目として掲げており、トップチームの観戦環境や災害時の機能強化など、多様な市民ニーズを踏まえた施設の規模や運営手法について検討を進めています。
郷土の森総合体育館は現在、郷土の森公園内に位置し、延床面積約13,200㎡、地下2階・地上3階建ての施設です。体育室や武道場、弓道場、エアーライフル場、相撲場、卓球室、レクリエーションホール、幼児体育室、トレーニング室、会議室など、多彩なスポーツ・文化機能を備えています。特に武道場や体育室は稼働率が高く、弓道場や卓球室、トレーニング室の利用者数は増加傾向にあります。現在は直営で運営されており、多くの市民に利用されています。

府中市は、施設の老朽化や管理コストの増加、市民ニーズの多様化に対応するため、「府中市文化・スポーツ施設配置等適正化計画」を策定し、総合体育館の移転にあたっての機能統合を図る方針を示しています。特に隣接する生涯学習センターの体育機能を新総合体育館に統合し、学習機能は交通利便性の高い中心市街地に移転して中央文化センターと連携させる計画です。宿泊機能については、今後の宿泊サービス基本方針に基づき廃止する方針が決まっています。
既存の建物は機能の分散移転に伴い解体される見込みであり、適正な施設配置を実現するため、生涯学習センター図書館は地区内に残しつつ総合体育館と複合化して整備します。生涯学習センターは延床面積約20,000㎡、地上4階、地下1階建てで、講堂や研修室、温水プールなど多様な機能を持ち、平成25年度から指定管理者制度による運営が行われています。新総合体育館には学習と体育の両機能のうまく融合させることが求められています。

移転先の府中基地跡地留保地は、かつて米軍基地の一部として使用されていた約14.9ヘクタールの未利用地であり、令和2年に利用計画が策定されました。さらに令和3年9月には隣接する米軍通信施設跡地約0.8ヘクタールも返還され、これを含めた利用計画の見直しが進められています。自然環境調査では、東京都のレッドリストに掲載される希少なオオタカの営巣が確認されたほか、計24種の希少動植物が生息していることが分かりました。
これらの生態系を保護しつつ、総合体育館の移転や周辺地域のまちづくりに配慮した土地利用の検討が進められています。利用計画の見直しは令和7年度に完成予定で、その後都市計画決定と土地処分が行われ、新たなまちの核としての整備が本格化します。

新総合体育館の基本構想検討は、令和6年度に設置された協議会を中心に、令和7年度までに施設の機能、役割、事業化に向けた課題整理を行うことを目的としています。府中市のスポーツ振興の特徴として、ラグビーやサッカー、バスケットボールなど多くのトップチームと連携し、障害者スポーツの普及や市民のスポーツ参加促進を重視している点があります。また、市内に43か所のスポーツ施設が整備され、その多くは直営で運営されており、行政に蓄積された運営ノウハウも強みです。
検討にあたっては、単に体育館施設の移転にとどまらず、府中基地跡地留保地のまちづくり計画やスポーツ政策と連携し、まちづくり全体へのスポーツのもたらす効果を具体化します。市民アンケートでは、スポーツ観戦環境の充実や気軽にスポーツを楽しめる生活空間の整備、参加のハードルを下げる施策への期待が高いことが明らかになっています。新体育館には防災機能の強化も求められており、令和元年の東日本台風による浸水被害を踏まえた安全対策が計画に反映されます。
検討は令和6年度から7年度にかけて、類似施設調査や市民ニーズ調査、複数案の比較検討、利害関係者との調整、費用試算、専門的知見の導入など多角的に進められます。供用開始は令和15年度以降を目標とし、PFI手法の導入可能性も検討されます。老朽化した現体育館は、建設後に解体される予定です。
最終更新日:2025年6月27日