東京都葛飾区の高砂地区を対象とした「高砂地区まちづくり方針(仮称)」が、高砂地区開発協議会により取りまとめられ、公表されました。これは、2022年4月に京成本線などを対象とした連続立体交差事業が着工準備採択を受けたことを契機に始まった取り組みで、地域の都市基盤整備と一体となったまちづくりの具体化を目指すものです。
このまちづくり方針は、葛飾区が2020年に策定した「高砂駅周辺地区まちづくりガイドプラン」を土台とし、地域の課題や将来的な方向性、そしてまちづくりの目指す姿を明確に示すものです。高砂地区は京成高砂駅を中心に、東西を河川に挟まれた約84ヘクタールの広大なエリアであり、区の都市計画マスタープランにおいて「広域拠点」として位置づけられる重要な地域です。
今後、令和7年(2025年)7月からは地域住民へのアンケート調査や、地域イベントを活用した「オープンハウス」による意見募集が実施される予定です。こうした住民参加型のプロセスを経て、2026年度初めには高砂地区開発協議会から葛飾区へ正式なまちづくり提案が提出され、行政計画としての「ガイドプラン」へ反映される見通しです。
→葛飾区 高砂地区まちづくり方針(仮称)の紹介・意見募集について
高砂地区まちづくり方針(仮称)の概要
1. まちづくり方針の公表
葛飾区高砂地区を対象に、「高砂地区まちづくり方針(仮称)」が高砂地区開発協議会により公表された。
2. 連続立体交差事業との連携
この方針は、2022年に京成本線などが連続立体交差事業の着工準備採択を受けたことを契機としている。
3. ガイドプランとの関係
2020年に策定された「高砂駅周辺地区まちづくりガイドプラン」を踏まえて、まちづくりの方向性を具体化するもの。
4. 高砂地区の位置づけ
対象は京成高砂駅を中心とした約84haで、区の都市計画マスタープランにおいて「広域拠点」に指定されている。
5. 今後のスケジュール
2025年7月以降、住民アンケートや意見募集が行われ、2026年度初頭に協議会から葛飾区へ提案が提出される予定。
6. 住民参加型のまちづくり
地域住民の意見を取り入れた「オープンハウス」やイベントなどを通じ、住民参加型で方針を練り上げていく。
7. 行政計画への反映
最終的には、協議会の提案をもとに行政計画としての「ガイドプラン」へ反映させていく方針である。

高砂地区のまちづくり方針は、京成本線およびその周辺の連続立体交差事業が国の「着工準備採択」を受けたことを直接のきっかけとしています。これは東京都が国の補助を受けて事業準備に入ることを意味し、鉄道によるまちの分断を解消する大規模な都市整備の前段階にあたります。
これに呼応するかたちで、2023年3月、高砂地区開発協議会は「高砂地区まちづくり勉強会」を立ち上げ、これまで計8回にわたり地域の交通、防災、都市基盤、自然環境など多様なテーマについて議論を重ねてきました。その成果がこのたび、「高砂地区まちづくり方針(仮称)」としてまとめられたのです。
勉強会では、単なる理論や計画にとどまらず、地域住民や専門家、行政関係者などの意見交換を通じて、地域に根ざした実践的な視点を反映した内容が重視されました。

高砂地区は葛飾区の東部に位置し、中川・新中川・江戸川という大河川に囲まれたエリアです。京成高砂駅には京成本線、京成金町線、北総線という3路線が乗り入れており、都心や成田空港などへのアクセス性に優れたターミナル機能を担っています。
また、駅周辺には商店街が形成されており、東側には約4.3haの鉄道車庫、南東部には都営高砂団地(建替事業中)など、多様な土地利用が混在しています。都市計画マスタープランでは、当該地域は葛飾区の「広域拠点」として位置づけられており、今後のまちづくりにおいても交流・賑わい・居住の多面的な機能の集約が求められています。
こうした立地特性は、鉄道高架化や再開発によってさらなる魅力や価値向上が期待されており、東京東部の都市構造再編における重要なポジションを担っています。

まちづくり勉強会では、高砂地区の現状について多角的な視点から分析を行い、地域が抱えるさまざまな課題を整理・体系化しました。まず、大きな問題として、鉄道によって地区内が分断されている現状が挙げられます。とりわけ「開かずの踏切」の存在が、地域内の移動を妨げ、日常生活や災害時の安全確保に支障をきたしています。また、京成本線と金町線の乗り換えの不便さも課題であり、交通結節点としての利便性が十分に確保されていません。
さらに、駅前にバスやタクシーが円滑に乗り降りできる施設が整備されておらず、公共交通との接続性にも課題があります。地区内の道路環境にも問題があり、狭くて行き止まりの道路が多いため、地域全体の回遊性が乏しい状況です。加えて、この地域は海抜ゼロメートル地帯に位置しており、水害リスクが非常に高いという地理的な脆弱性を抱えています。
建物の多くが老朽化していることも、防災面や居住環境の観点から不安材料となっています。また、駅前や商業エリアにおいても十分な賑わいが感じられず、地域の魅力や活力の低下が懸念されます。こうした複合的な課題に対しては、単なるインフラ整備にとどまらず、暮らしの質を向上させる住環境の整備や、人々の交流や文化の発信を支える拠点づくりなど、総合的でバランスの取れたまちづくりが強く求められています。


まちづくりの基盤として重視されているのが、鉄道高架化に伴う安全かつ連続性のある交通ネットワークの構築です。鉄道によって分断されていた地域をつなぎ直し、駅と拠点間、川沿い空間などを結ぶ動線整備を進めることで、歩行者・自転車・車のすべてにとって快適な移動環境を実現することが目指されています。
また、駅前にバスロータリーやタクシー乗降場を整備することや、コミュニティバスの導入なども検討されており、交通手段の多様化と利便性向上が期待されます。鉄道駅の機能強化と地域内交通の連携が、まちの一体性を高める鍵となります。

高砂駅前の駅前広場や鉄道車庫跡地、都営高砂団地建替によって創出される新たな土地を活用した拠点整備が、まち全体の活性化の中心となります。各拠点にはそれぞれに応じた機能(商業、文化、住居、福祉など)を持たせ、それらを相互につなぐことで、回遊性と多様なにぎわいを創出していきます。
また、「一度降りてみたい駅」「歩いて楽しいまち」としての魅力づくりのためには、都市景観やまちなみの向上、文化的要素の導入も不可欠です。高砂音楽祭など地域イベントの活用や、来訪者も意識したインバウンド対応も検討されています。

高砂地区は海抜ゼロメートル地帯に位置し、水害や地震などの自然災害に対する脆弱性が課題とされています。今後のまちづくりでは、防災性を高めるハードとソフトの両面の対策が必要です。
具体的には、避難所や避難経路の整備、緊急時の情報伝達体制の強化、建物の耐震・不燃化、河川氾濫への備えなどが想定されています。加えて、高齢者や障がい者を含めた災害弱者への配慮も重要な視点として組み込まれています。災害に強いまちは、日常においても安全・安心な暮らしを支える土台となります。

中川や高砂北公園など、地域に存在する自然資源を有効活用しながら、「憩い」「交流」「健康」「文化」の要素を備えた快適な住環境づくりが方針の柱の一つです。
例えば、中川沿いに親水空間や遊歩道を整備することで、自然を身近に感じられる暮らしの実現が目指されています。さらに、高砂音楽祭など既存の地域文化資源を活かした文化活動やイベントの支援によって、地域のアイデンティティと住民の誇りを育むことにもつなげていきます。自然と都市のバランスが取れた「高砂らしさ」の創出が、まちの持続的な魅力の鍵となるでしょう。
最終更新日:2025年7月25日

