名古屋駅周辺ではリニア中央新幹線の開業を見据え、駅前広場の再整備やリニア駅上部空間の活用、民間再開発など、かつてない規模で都市更新が進められています。こうした動きの中で、名古屋駅南側及びささしまライブ24地区東側に広がる「名駅南地区」は、柳橋市場や納屋橋、ささしまライブ24、中川運河、堀川、伏見・栄・大須方面といった多様なエリアを結ぶ結節点として、都心の回遊性を高める重要な地域と位置付けられています。
現在、この地区では(仮称)名駅南通の南西側一部を構成する「都市計画道路・笹島線(東側区間)」の整備が進み、西側は舗装が行われ、東側は整地が行われて道路形状が姿を現した段階となっています。あわせて名駅通の沿道では、2026年開業予定の「ポルシェアプルーブド&サービスセンター名古屋」の建設も進行しており、名駅南地区では公共インフラ整備と民間投資が同時に進む、都市構造が大きく転換する局面を迎えています。
名駅南地区まちづくりの概要
1.名駅南地区の結節点としての役割
名古屋駅南側に位置し、柳橋・納屋橋、ささしまライブ、中川運河、伏見・栄方面を結ぶ中間拠点。
都心回遊性を高める広域ネットワークの要所としての機能。
2.リニア開業を見据えた都市更新の進展
駅前再開発やリニア駅整備と連動した名駅周辺全体の都市構造再編。
駅前機能を補完する拡張ゾーンとしての名駅南の位置付け。
3.笹島線(東側区間)整備による交通機能強化
幹線道路網の再編と交通分散を目的とした都市計画道路整備。
渋滞緩和と地区内移動性向上を図る基盤インフラの形成。
4.道路完成段階に入った笹島線整備の進捗状況
幅員30メートル・延長約196メートルの4車線道路の形状一部完成。
供用開始を見据えて整備が進行する事業フェーズ。
5.ポルシェ施設建設に見る沿道開発の進展
自動車ショールームと整備機能を併せ持つ都市型自動車拠点の立地。
サービス産業型用途への転換を象徴する民間投資の動き。
6.公共投資と民間開発が連動する再生構造
道路整備や高速出入口整備と一体で進む沿道土地利用更新。
インフラ整備が投資を誘発する都市再生の好循環形成。
7.滞在型都市拠点への転換と今後の課題
低未利用地の活用と歩行者回遊性向上を軸とする空間再編。
多用途混在によるにぎわい創出とエリア価値向上の必要性。

名駅南地区は名古屋駅の至近に位置しながら、北側には柳橋市場や納屋橋といった歴史的に商業活動が集積してきたエリアが広がり、西側には再開発が進む新都心「ささしまライブ24」と中川運河の親水空間が展開しています。さらに東側には堀川を挟んで伏見・栄・大須方面へと連続する都市軸が形成されており、名駅南地区はこれら複数の性格の異なる地域を結び付ける中間領域として機能しています。
このため、単なる交通通過点としてではなく、都心回遊ネットワークの中で人の流れを受け止め、滞在や消費、交流が生まれる拠点としての役割が強く期待されており、名古屋駅前の超高密度エリアを補完する緩衝地帯としての機能も担っています。

笹島線(東側区間)は、名古屋駅周辺地区における幹線道路網の強化と交通機能の再編を目的として計画された都市計画道路であり、特に笹島交差点周辺で慢性化してきた交通渋滞の緩和や、周辺市街地への交通負荷分散を担う路線として位置付けられています。

名駅南地区ではこれまで、広幅員道路によって街区が分断され、歩行者の回遊性や自転車移動の連続性が確保しにくい状況が続いてきましたが、新たな道路整備によって南北・東西方向の移動が円滑化されることで、地区全体の交通構造そのものが再編されることになります。結果として、道路は単なる通過インフラにとどまらず、沿道開発と連動した都市軸としての役割を担うことが期待されています。

笹島線(東側区間)は幅員30メートル、延長約196メートル、4車線構成の都市計画道路として整備が進められており、2019年度に事業が着手され、2020年3月に事業認可を受けた後、段階的に工事が進行してきました。事業期間は2025年度までとされており、現在は西側が車道のアスファルト舗装や歩道のインターロッキング舗装が完了し、東側が整地が行われ、歩道部分のインターロッキング舗装のみ行われた状態となっています。

今後は街路樹の設置や東側の車道のアスファルト舗装工事などを経て供用開始を迎える見通しであり、完成後は自動車交通の円滑化に加えて、歩行者空間の質の向上や街路樹による景観形成など、都市景観の改善にも一定の効果をもたらすと考えられています。将来的には、沿道建築物と連携した歩行者ネットワークの形成が進むことで、通行量だけでなく滞在価値を高める道路空間へと発展していく可能性があります。

笹島線沿道では、旧仏壇販売店「すゞや名古屋支店」跡地において、輸入自動車の販売などを手がけるピーシーエヌにより、ポルシェの中古車販売と整備機能を併せ持つ都市型拠点「ポルシェアプルーブド&サービスセンター名古屋」の建設が積水ハウスによって進められています。建物は地上4階建て、高さ約38.8メートル、延床面積5,796平方メートルの規模で計画されており、名古屋駅至近という立地特性を生かした高機能な自動車関連施設となる予定です。

竣工は2026年1月中旬、開業は2026年が予定されており、販売機能とサービス工場を一体化した施設として、単なるショールームにとどまらず、アフターサービスまで含めた総合拠点として機能することになります。こうした高付加価値型施設の進出は、名駅南地区が従来の物流・業務系用途中心の街並みから、サービス産業や都市型商業を取り込む段階へと移行しつつあることを象徴する動きともいえます。

名駅南地区のまちづくりの特徴は、道路整備や交通結節点の強化といった公共投資と、沿道での民間開発が時間的にも空間的にも連動して進められている点にあります。笹島線整備に加え、名古屋高速道路の新洲崎出入口整備や、将来的なSRT(新たな路面公共交通システム)導入に向けた検討が進められていることで、地区全体のアクセス性は今後さらに向上する見込みです。


こうしたインフラ整備によって立地条件が改善されることで、土地の高度利用や用途転換が進みやすくなり、民間投資の誘発効果が高まるという好循環が生まれつつあります。ポルシェ施設の建設はその具体例の一つであり、今後もオフィス、商業、共同住宅、サービス関連施設など多様な開発が沿道を中心に展開される可能性があります。

名駅南地区では近年、都心居住のニーズを背景に人口や世帯数が増加傾向にある一方で、依然として平面駐車場や低利用地が多く残されており、土地利用の効率性という点では課題を抱えています。また、飲食や小売といった日常利用型の商業施設が少なく、夜間や休日のにぎわいが限定的である点も指摘されています。
さらに、幹線道路が多い都市構造の影響で、街区間の横断がしにくく、歩行者の回遊動線が分断されやすいという問題もあります。今後は道路空間の再配分や公開空地の活用、ポケットパークや緑化の導入などを通じて、歩いて回れるスケールでの都市空間再編を進め、地域内での滞在時間を伸ばしていくことが重要な整備方針となります。

リニア中央新幹線の開業後、名古屋駅周辺では国内外からの人流がさらに増加すると見込まれており、名駅南地区は駅前エリアの機能を補完し、都市活動を受け止める拡張ゾーンとしての役割を担うことになります。駅前の超高層ビル群とは異なり、名駅南では住宅、オフィス、商業、サービス、創造産業などが混在する、多様性を持った都市空間の形成が志向されています。

笹島線の完成と沿道開発の進展により、名駅南はこれまでの「通過する場所」から「滞在し、活動が生まれる都市拠点」へと性格を変えつつあり、今後はエリアマネジメントや地域主体のまちづくり活動の成熟が、地区全体の魅力と価値をさらに高めていく鍵となります。
最終更新日:2026年1月11日

